人工営巣木 その2
- 2010年10月29日
- 保全
少し前にアメリカに設置されている人工営巣木のことを書きました。今回はその話の続き。同じくアメリカのウイスコンシン州の事例です。どうもこの州ではあちこちで人工営巣木の設置が試みられているようなのです。
今回ご紹介するのは前回の電柱型とは見かけがずいぶん異なります。金属パイプを三脚のように組み、そのてっぺんに巣を乗せるというものです。これが設置されたのはAlmond Marshという湿地。ここもやはり、営巣木が枯死し、コロニーの規模がどんどん縮小していることから人工的な補助を思い立ったようです。作業はオーデュボン協会が主体となり、森林保護局と多くのボランティアが協力して行っています。こちらのページで構造物と作業の様子が御覧になれます。見てのとおり、今回の構造物はいたってシンプル。前回の電柱型は州当局が事業主体だったこともあり、多くの企業を巻き込んで重機を使う大掛かりな作業でしたが、こちらは全て人力です。作業している人たちもなんだか楽しそうです。
それにしても、この構造物、いかにも人工的です。てっぺんに巣が無ければ、まるで自然の中につくられたオブジェのようです。ところが、こんなものでもサギは営巣するのですね。この試みは昨年始められたもので、1年目は試験的に1体を設置し、めでたく営巣を確認。これに気を良くして2年目の今年は11体を増設しています。その効果はというと、12の人工巣のうち9巣が利用され21羽のヒナが巣立ったとのことです。一方、木にかけられた自然巣のほうは23巣(途中で4巣が崩壊)で巣立ったヒナが27羽。なぜか人工巣のほうが圧倒的に成績が良いですね。
このプロジェクトは地元でもちょっとしたニュースになっています。オオアオサギの個体数も増え、おまけにオオアオサギに関心をもつ人も増えたということで予想以上の成果が得られているようです。
それにしても、あちらの人々がオオアオサギにかける熱意というのは目を見張るものがありますね。ここまでオオアオサギのことを気にかけるのは何故なのでしょう? この州でオオアオサギが保全上留意すべき種とされていることは理由のひとつかもしれませんが、それでも種自体はとくに絶滅の心配があるわけではないですし、やはりオオアオサギそのものに対する何か特別な思い入れがあるように思えてなりません。それが何なのか、なぜそうなったのかは私には分かりません。けれども、もしそれを知ることができれば、アオサギと人との関わり方を考えていく上でかなり大きなヒントになるような気がするのです。