パンの利用法
- 2011年01月14日
- 行動
友人から新聞の切り抜きが送られてきました。右の記事は今月9日の朝日小学生新聞に載っていたものだそうです。ミニ図鑑とありますから、単なるアオサギの紹介かと思いきや、かなり特殊な事例が書かれていたので驚きました。まあ、そうでなければ、友人がわざわざ送ってくるはずもないのですが。
たしかに日比谷公園あたりだと人馴れした野鳥も多そうですね。おそらくアオサギも例外ではないのでしょう。けれども、いくら人に馴れているとはいえパンを食べるのはどうかと思いますよ。
彼らは基本的に魚食性の鳥です。ただ、魚が全てというわけではありません。エビやカニ、オタマジャクシといった水生の動物はもちろん、バッタやトンボなどの昆虫、ヘビやネズミ、仔ウサギ、果ては水鳥のヒナや小鳥類まで、ともかく口に入るものなら何でも飲み込みます。けれども、それは生きている動物に限ります。たまにエサをうまく獲れない幼鳥や保護された個体が、死んだものや、場合によっては加工されたものを食べることはありますが一般的ではありません。もしそれを考慮に入れたとしても、彼らの食べ物が動物の肉であることには変わりはありません。肉食であるという点は彼らの本性として譲れないもののはずです。それを何を思ったのか、パン、で大丈夫なのでしょうか? のどごし云々の話ではないと思うのですが…。
ところで、パンと言えば、オオアオサギの行動に関して興味深い話があります。こちらはオオアオサギがパンを擬似餌として利用したというもので、1998年にColonial Waterbirdsという雑誌に掲載されています(Zickefoose, J. and W. E. Davis. 1998. Great Blue Heron (Ardea herodias) uses bread as bait for fish source. Colonial Waterbirds 21:87–88.)。擬似餌漁というとササゴイが有名ですが、このオオアオサギの場合は積極的に自分でパンを撒くのではなく、人が水面に投げたパンの近くに行き、魚がパンにおびき寄せられるのを待つというやり方のようです。著者はこの行動について、ササゴイに見られるような、パンを自ら運び水面の適当な場所にセッティングするという、より積極的な行動への移行過程であると説明しています。なお、このオオアオサギは、人が投げたパンの最初のひとかけらは口に入れたそうです。ただし、その後は他に浮いたパンがあっても食べようとしていません。パンが食べ物だとは認識しなかったのでしょうね。
ササゴイによる正真正銘の擬似餌漁はこちらのビデオで見られます。
さて、近い将来、同じような行動がアオサギにも見られるようになるのでしょうか? 少なくとも、パンがアオサギの餌メニューに加わることよりは現実味があるような気がするのですが…。