アオサギを議論するページ

サギの救助

アオサギといえば警戒心の強さは折り紙付き。捕まえようにもそう簡単に捕まる鳥ではありません。この警戒心も生きる上ではなくてはならないものですが、場合によってはその警戒心の強さがかえって仇となります。たとえば、トラブルに見舞われたアオサギを人が善意で助けようとしたとき。

そんな事例は探せばいくらでも見つかります。たとえば…。

といった具合で、何とかしてあげたいけれどどうにもならないということが多いようです。

そんな場合、少しは役立つかもという方法がこちらのビデオで紹介されていました。場所はフロリダ州のとある公園のようです。なお、このビデオはNorthwest Florida Daily Newsで紹介されています。

ビデオのサギはくちばしに釣り糸が絡まったオオアオサギの幼鳥。映像が始まった途端、捕獲は一瞬で完了し、その後、はさみやナイフで釣り糸を切る作業がしばらく続きます。最後は放鳥。アオサギは無事に飛び立ってゆきました。

この映像、よく見ると生きた魚でアオサギをおびき寄せているんですね。まあ、そうでもしないとあんな都合の良い場所にはとても来てくれないでしょうけど。記事を読むと、捕獲の3週間前に、公園の常連であったデビーさんが糸の絡まったオオアオサギを見つけたのが始まりだったようです。デビーさんも当初は為す術がなかったようですが、やがて小さな魚を与えはじめます。サギのほうは魚を突っつくことでわずかな滋養を得ることはできていたようです。たぶん、くちばしの開閉が多少はできたのだと思います。ということで、あらかじめ餌付けされた状態ではあったようです。サギにしてみればせっぱ詰まった状況で、持ち前の警戒心もいくぶん犠牲にせざるを得なかったのでしょう。網が投げられた後のオオアオサギの反応もそれほど悪いようには見えないのですが、さすがにあれだけ近いとどうしようもありませんね。あえなく捕まってしまいました。

この捕獲に使われたネットはたぶん投網だと思います。このていどのものだとサギを傷つけることも少ないかもしれません。サギにある程度まで近づける状況であれば、この方法は機動性もありもっとも簡便で効果的な方法のように思います。おそらく、役所かそれなりの機関であればロケットネットとかネットガンとか他にも方法はあるのでしょう。けれども、そちらのほうがより安全で確実な方法かというと疑問です。

デビーさんも最初は保護してくれる公的な機関に連絡したそうです。ところが一向に音沙汰無し。仕方なく、知人のつてを辿っていくうちにこの投網をもったジミーさんを見つけたそうです。この場合、捕獲の技術をもったジミーさんに出会ったことは幸いでしたが、サギを救助できたのはあらかじめデビーさんが餌付けしていたからこそ。そういうことまで役所が面倒を見てくれるかと言えばこれまたはなはだ疑問です。

法律上は日本でもアオサギを勝手に捕獲することは禁じられています。けれども、ここで最初に挙げた国内のいくつかの事例を見ても、合法的に捕獲できる人たちが半ば匙を投げているのは明らかです。実際、1羽のアオサギを人数と時間をかけて何が何でも助けようとすることはないでしょう。けれども、これがたとえばタンチョウだったらどうでしょうか? なんだかんだ言っても、結局のところアオサギとタンチョウでは人から見た命の重さが違うのです。善意の行為が法律によって抑えられて、助かるかもしれないアオサギが無駄に命を落とすのはやりきれません。もし、デビーさんとジミーさんのように時間をかけて救助できる人がいるなら、それに伴う行為は法的にも認められて然るべきものだと思います。そうすれば、僅かかもしれないけれども助かる命は確実に増えると思うのです。

地震

地震が起きて5日が過ぎました。どれだけテレビで映像を見ても、この惨状が何なのか、私の想像力ではとても理解できそうもありません。

アオサギが、ここ北海道にも渡ってきました。札幌の隣にある江別コロニーでは、昨日の段階で60羽弱がすでに営巣を開始中。12日に確認したときはまだ到着してませんでしたから13日あたりに飛来したのでしょう。とはいえ、今こちらに来ているのは全体の2割にも満たないはずで、ほとんどはまだ北海道にも辿り着いていないものと思います。もしかすると、今頃、被災地付近を北上中の群れもいるかもしれません。あるいは、11日に地震や津波に遭遇したサギがいたかもしれません。ただ、翼をもつ彼らはそこにたまたま居合わせることはあっても被災することはないんですね。それを思うと、人が地上にしがみついてしか生きられないことの無力さをあらためて感じざるを得ません。

アオサギは人間と比べるととても不確実な世界に生きています。激変するのが当たり前の環境に身を置く彼らにとって、地表面が変化するとか部分的に無くなるとかはもとより織り込み済み。翼があることに加えて、そうしたことが起きても実害が極力少なくなるようなライフスタイルを彼らは選んでいます。ところが、人はというと、しっかりした地面のあるところでしか生きられません。だからこそ、少しでも安心して暮らしていけるように、身の回りのあらゆるところを細部に至るまで手を加えてきたのだと思います。しばしば個人や組織の欲や独善、あるいは無知によってその行為の正当性が歪められはしても、人が環境を自ら改良するのは、基本的にはそうすることでしか生きる術がないからです。けれども、人がどんなに努力をしても、地球がほんのちょっと身を震わせただけで一瞬で全てが無くなってしまうのが現実。その不条理さを思うといたたまれません。

亡くなった方のご冥福を心よりお祈りします。そして、今どこかで無事でいるはずの方々が一刻も早く救出され、避難所の皆さんが少しでも早く日常の暮らしに戻れることを切に願っています。

営巣期直前の日々

皆さんのところのアオサギはもう巣づくりを始めたでしょうか?
北海道はまだこれからという所が多そうですね。江別のコロニーはまだ渡りのサギたちが飛来するのを待っているところ。ねぐらで越冬していた十数羽は、気が向けばコロニーに出向き、コロニーで落ち着くのかなと思えばまたねぐらへ、といったどこかふわふわした日々を送っています。おそらく、ここ1週間から10日ぐらいはこんな感じが続くのではないでしょうか。その間に全体の2割ていど、100羽ほどのサギが渡ってくるはず。そうなれば、コロニーにずっと留まるようになり、いよいよ本格的に営巣開始です。

こちらで越冬したサギたちは、渡りのサギがいつ来るのかとそわそわした気分なのだと思います。午前中、コロニーに向かい、そこで渡りの連中が来てなければ、「ああ、今日は来ないんだな」と諦めてねぐらへ戻る。きちんと調べた訳ではありませんが、どうもそんなパターンがあるような気がします。

アオサギのくちばしは薄くオレンジ色に染まっている程度でまだ鮮やかな婚姻色は出ていません。けれども、ねぐらで餌を探す光景は真冬には見られなかったこと。繁殖期を目前にして、アオサギの行動にも少しずつ変化が現れているようです。

写真は一昨日、ねぐらとなっている水辺で撮ったもの。少し前からいるオオダイサギとのツーショットです。白い色のせいもあるのでしょうけど、オオダイサギのほうがアオサギよりいくぶん大きく見えますね。

人工営巣木 その3

サギの営巣シーズン、今年も始まりましたね。この時期になるとネット上でもサギ関連のニュースが少しずつ増えてきます。ニュースの内容はというと、やはりこの時期ですから、どこどこのコロニーにサギがやってきたという季節の話題が大半。けれども、たまには本来のニュース的な内容のものもあります。

今回紹介するのは人工営巣木設置のニュース。アメリカ、ウイスコンシン州のオオアオサギの話題です。なんでも、オオアオサギが利用していた木が枯死したので、代替となる人工営巣木をつくったということのようです。これは地元の自然保護団体が企画したもので、作業のほうはエネルギー関連の民間会社が行っています。詳しくはWSAW.comというテレビ局のサイトに記事と動画があるので御覧になって下さい(追記:動画は削除されたようです。作業の様子と完成した人口営巣木の写真はこちらのページ(4ページ目)で見られます)。

インタビューで、黄色いヘルメットの作業員?が「(人工営巣木の設置は)動物の世界へのお返し(giveback)のようなもの」と言っていたのが印象的でした。じつは、ここの会社は仕事としてでなくボランティアでやっているのですね。だからこそ、givebackという言葉も自然に出てくるのでしょう。

人工営巣木については少し前にも書いたことがありました(この記事とかこの記事)。面白いことに、これらはいずれも今回と同じウィスコンシンの事例なんですね。同じ州内のことだから何かガイドラインがあってそれに沿ってやっているように思いますが、そういうわけではないようです。州が単独でやることもあれば官民協同の場合もあり、そして、今回の事例のようにNPOと民間の会社のボランティアだけでやっていることもあります。だから、人工営巣木の形状も様々です。この自発的多様性というか、変に画一化されてないところがいいですね。

ただし、ひとつ気になるのは今回の映像にあった人工営巣木の形状。見たところそれほど穏やかな気象条件のところとも思えませんし、そこそこの強い風に煽られれば、あのつくりでは巣の台座ごと吹き飛ばされるのではと心配でなりません。もし私がオオアオサギなら、あの上での子育てはちょっと遠慮したいところです。

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