サギの救助
- 2011年03月21日
- 保全
アオサギといえば警戒心の強さは折り紙付き。捕まえようにもそう簡単に捕まる鳥ではありません。この警戒心も生きる上ではなくてはならないものですが、場合によってはその警戒心の強さがかえって仇となります。たとえば、トラブルに見舞われたアオサギを人が善意で助けようとしたとき。
そんな事例は探せばいくらでも見つかります。たとえば…。
『葉山でアオサギ受難、くちばしに網からまる』(神奈川新聞 2009年10月20日)
『あカン、ポイ捨て アオサギのくちばしにアルミ缶』(神戸新聞 2003年4月19日)
といった具合で、何とかしてあげたいけれどどうにもならないということが多いようです。
そんな場合、少しは役立つかもという方法がこちらのビデオで紹介されていました。場所はフロリダ州のとある公園のようです。なお、このビデオはNorthwest Florida Daily Newsで紹介されています。
ビデオのサギはくちばしに釣り糸が絡まったオオアオサギの幼鳥。映像が始まった途端、捕獲は一瞬で完了し、その後、はさみやナイフで釣り糸を切る作業がしばらく続きます。最後は放鳥。アオサギは無事に飛び立ってゆきました。
この映像、よく見ると生きた魚でアオサギをおびき寄せているんですね。まあ、そうでもしないとあんな都合の良い場所にはとても来てくれないでしょうけど。記事を読むと、捕獲の3週間前に、公園の常連であったデビーさんが糸の絡まったオオアオサギを見つけたのが始まりだったようです。デビーさんも当初は為す術がなかったようですが、やがて小さな魚を与えはじめます。サギのほうは魚を突っつくことでわずかな滋養を得ることはできていたようです。たぶん、くちばしの開閉が多少はできたのだと思います。ということで、あらかじめ餌付けされた状態ではあったようです。サギにしてみればせっぱ詰まった状況で、持ち前の警戒心もいくぶん犠牲にせざるを得なかったのでしょう。網が投げられた後のオオアオサギの反応もそれほど悪いようには見えないのですが、さすがにあれだけ近いとどうしようもありませんね。あえなく捕まってしまいました。
この捕獲に使われたネットはたぶん投網だと思います。このていどのものだとサギを傷つけることも少ないかもしれません。サギにある程度まで近づける状況であれば、この方法は機動性もありもっとも簡便で効果的な方法のように思います。おそらく、役所かそれなりの機関であればロケットネットとかネットガンとか他にも方法はあるのでしょう。けれども、そちらのほうがより安全で確実な方法かというと疑問です。
デビーさんも最初は保護してくれる公的な機関に連絡したそうです。ところが一向に音沙汰無し。仕方なく、知人のつてを辿っていくうちにこの投網をもったジミーさんを見つけたそうです。この場合、捕獲の技術をもったジミーさんに出会ったことは幸いでしたが、サギを救助できたのはあらかじめデビーさんが餌付けしていたからこそ。そういうことまで役所が面倒を見てくれるかと言えばこれまたはなはだ疑問です。
法律上は日本でもアオサギを勝手に捕獲することは禁じられています。けれども、ここで最初に挙げた国内のいくつかの事例を見ても、合法的に捕獲できる人たちが半ば匙を投げているのは明らかです。実際、1羽のアオサギを人数と時間をかけて何が何でも助けようとすることはないでしょう。けれども、これがたとえばタンチョウだったらどうでしょうか? なんだかんだ言っても、結局のところアオサギとタンチョウでは人から見た命の重さが違うのです。善意の行為が法律によって抑えられて、助かるかもしれないアオサギが無駄に命を落とすのはやりきれません。もし、デビーさんとジミーさんのように時間をかけて救助できる人がいるなら、それに伴う行為は法的にも認められて然るべきものだと思います。そうすれば、僅かかもしれないけれども助かる命は確実に増えると思うのです。