アオサギを議論するページ

名寄コロニー消滅

北海道名寄市のアオサギコロニーは、営巣数200を超え、規格外の網走湖コロニーを除けば、道内の現存コロニー中、おそらく最大クラスだと思います。天塩川流域に点在するコロニー群の中ではペンケ沼コロニーと双璧をなすスケールの大きな営巣地です。

写真がそのコロニー。手前のヤナギ林の奥が川になっていて、その向こうに小高い丘があります。この丘の緑の濃い針葉樹の林がコロニーです。ちょうど営巣期に撮った写真で、巣にいるアオサギが白く点々と見えています。コロニーの立地環境としては申し分のないところです。

このコロニーがもうひとつ素晴らしいのは、地元の人をはじめ多くの人々が好意的に見守ってきたということです。じつは、写真の森も、以前の所有者が林を手放すことになった際、売却先によってはアオサギがどうなるか分からないということで、ある方がわざわざアオサギのために買い取ったものなのです。

ただ、そんな恵まれた環境をもつ名寄コロニーにもひとつ落とし穴がありました。数年前からオジロワシがたびたびコロニーを襲うようになっていたのです。これについては、アオサギのことを気にかけ、毎年のように記事を書いていた地元の名寄新聞がその様子を伝えています。3年前の記事です。⇒ 名寄新聞(2008年4月10日付け)

今年、ここにアオサギが飛来したのは4月4日だそうです。しかし、相変わらずオジロが徘徊してなかなか落ち着かなかったのだとか。そして、それからひと月あまり、名寄のサギたちはとうとうコロニーを放棄してしまいました。毎年毎年、執拗な襲撃を受け、もう限界だったのでしょう。これも先日、名寄新聞が報じていました。⇒ 名寄新聞(2011年6月9日付け)

このような大規模コロニーの消滅は、道内では4、5年に1度くらいの頻度であります。ここ20年ではっきり特定できているのは、91年のコムケ湖、97年の野幌、04年の浦幌、それに今回の名寄で4度目です。このうち、コムケ湖のコロニーについては今回と同じくオジロワシが原因と見られています。近年、オジロは内陸に勢力を拡げていますから、他のコロニーもうかうかできません。

もっとも、オジロがアオサギをいつも襲っているのかというと、そういうわけではありません。日常的にアオサギのコロニー付近にいても全く気に留めないオジロもいます。この辺は個体差が大きいようです。名寄の場合は当たりが悪かったとしか言えませんね。

自然の中で起こったこととはいえ、あれだけのコロニーが放棄されるのはやはりショックです。新聞にも書かれていますが、オジロがいる限り、来年、サギたちが戻ってくることはないでしょう。今後は次にどこで営巣するのかが焦点になります。場所によっては人とのトラブルが起きかねませんから。ただ、過去の事例を見ると、放棄後のサギはえてして人の生活圏に近いほうへ向かう傾向があるのです。道内でいうと、野幌森林公園内で営巣していたアオサギが、放棄後、札幌市街に3ヶ所に分かれて新たなコロニーをつくったのが良い例です。他にも同じような例はいくつもあります。逆に、さらに山奥に引っ込んだという話はひとつもありません。

あまり市街地に近くないどこか適当な場所に、名寄のサギたちが落ち着けるスペースが残されていることを期待したいものです。ワシに追われた上に人にも追われたのではたまりませんからね。

アオサギのためにも脱原発

普段はアオサギに関係のないことはここには書かないようにしています。私がここに余計なことを書くことで、純粋にアオサギのことを知りたくてここを訪れる人が中立的な視点を保てなくなったら困りますから。たまたま私の意見に同意してもらえれば良いですが、反感をもたれると本来提供できたはずの情報も提供する機会を失ってしまいます。それはアオサギにとって不幸なことですし、何のためにこのようなサイトを公開しているのか分かりません。

だから、価値観や主義にかかわることはここでは極力書かないようにしてきました。しかし、これは別です。私も人間ですからまずは自分を含め人間のことを心配します。けれども、これは人間だけの問題ではありません。アオサギを含めあらゆる野生生物にとっての問題でもあります。福島第1原発のすぐ近くでは、多くの野生生物が、今この瞬間にも大量の放射線を浴びながら何も知らずに暮らしているはずです。防護服もつけず全身を放射線に晒したアオサギが、汚染水に住む猛毒の魚をパクパク食べているかもしれません。全てわれわれ人間のせいです。

さようなら原発1000万人アクション」が脱原発を目指して昨日15日より署名活動をはじめました。署名用紙はサイトに行けばダウンロードできますし、こちらの署名ページからネット上で直接署名することもできます。もちろん私も署名しました。今回のアクションが人間だけでなくアオサギを含め全ての生き物に対して希望をもたらしてくれることを切に願います。

10年!

3月半ばに始まったアオサギの繁殖シーズンももう3ヶ月が過ぎました。繁殖期全体から見るとおおよそ3分の2が終わったところです。もっとも、これは札幌辺りの話なので、場所が変われば多少時期が違ってくると思います。もうヒナがほとんど巣立ったところもあるかもしれませんしね。

さて話は変わりますが、このサイト、今日でめでたく開設10周年を迎えました。こんなサイトがよく10年ももっているものだと我ながら感心します。それもこれも、わざわざこんなサイトに来てくださる皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。次は20周年を目指してさらに内容を充実させていきます。などという気負いはまったくありませんのでご安心を。相変わらず、気の向くままに書いたり書かなかったりすると思います。これまで同様、気長にお付き合いいください。

とはいえ、10周年ですからね。少しは何か記念になるようなことをということで、動画のページをつくってみました。このページの右上の『動画集』のリンクをクリックしていただくとYouTubeのページに飛びます。そこに以前ご紹介したものも含め10本ばかり短い動画を置いてあります。当たり前ですが、アオサギしか写っていません。しかも、ただの記録映像ですので、アオサギが何か面白いことをしたり、最後にオチがあったり、そういうことはまるでありません。たんたんとアオサギが写っているだけです。ただ、文字や写真ではなかなか伝わらない部分が映像では一目瞭然ですので、アオサギの行動や形態については参考にしていただける部分もあるかと思います。そんなことで、よろしければ御覧下さい。なお、動画の下にある「もっと見る」のタブをクリックすると多少の説明は御覧いただけます。何を撮ったのか分からないときは参考にしてください。

では、11年目もどうぞよろしくおねがいします。

池からサギを追い払う方法

今年もオタマジャクシの降る季節になりましたね。⇒ こちら
今回はサギが犯人だと認めているようです。とんでもない推測をして大騒ぎするのもさすがに疲れたのでしょうか。素直に認められると却って寂しい気もしますが。

さて、それは置いておいて別の話です。先日、当サイトを御覧になった方から釣り池でのアオサギ防除についてメールでご質問をいただきました。じつは養魚場や釣り池でのアオサギの食害に困って当サイトを訪れる方はけっこういらっしゃいます。「アオサギ 被害」とか「アオサギ 防除」とかで検索すると当サイトが一番上に出てくるので、幸か不幸かここに辿り着いてしまうのですね。それだけアオサギの被害対策についてまともに書いているところが無いということなのでしょう。それを思うと、曲がりなりにも有用な情報をまとめなければと思うのですが、いつものことながら思うだけで一向に前に進みません。

そんなことで、今回はちょうど良い機会なので、お答えした内容の一部をここに書き留めておこうと思います。まとまったものでなく、とりあえず思いつくまま書きます。

釣り池での防除が難しいのはネットやテグスといった物理的な防除法が使えないからなのですね。より自然に近い状態のままアオサギを近づけさせないようにするわけですからこれは難題です。以前は、水深を50センチもとれば大丈夫と思っていたのですが、実際はどうやらこんなふうに飛び込むこともあるようで、浅瀬をなくしたからといって必ずしも安全ではありません。ではどうすればよいかということでいろいろ考えてみました。ひとつの案が右の絵で表したものです。やはりここでもアオサギが水に入れないように水際の水深は50センチ以上にします。ただ、それだけではアオサギが飛び込む可能性があるので、ここに魚がいてもアオサギが簡単に見つけられないように水草を茂らせます。この区間は水際から少なくとも2メートルはとったほうがほうが良いと思います。あまり短いと飛び越えて深いほうへダイブする恐れがありますから。ただ、これは相当な工事になりますし、池をつくる段階でやっておかないと、被害があってからつくり直すのは何かと大変そうです。

次は、アオサギを驚かして追い払う方法です。これはとにかくアオサギをびっくりさせれば良いのですからいろいろな方法が考えられます。単純に犬を放し飼いにして上手くいっているところもあります。音を出す装置とかでもいいわけです。そんな中で今回紹介するのはスプリンクラー。動物が一定範囲内に近づくと水が自動的にまき散らされる仕組みのもので、スケアクロウというでアメリカの製品です。パッケージにオオアオサギが描かれているところを見ると、あちらも日本と同じでサギ類の食害に手を焼いているということなのでしょうね。なお、実際にお求めになりたい方はAmazonで買えば半額くらいになるようです。こちらのビデオで実際に動作している様子が見られます。猫も犬もアライグマもシカも、そしてもちろんオオアオサギも皆びっくりして逃げていきます。ただの水ですから動物や鳥を傷つけることもありません。こんなものでも使いようによってはけっこう効果があると思います。アオサギの食害に困っている方、一度ご検討されてはいかがでしょうか。

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