名寄コロニー消滅
- 2011年06月23日
- 生態
北海道名寄市のアオサギコロニーは、営巣数200を超え、規格外の網走湖コロニーを除けば、道内の現存コロニー中、おそらく最大クラスだと思います。天塩川流域に点在するコロニー群の中ではペンケ沼コロニーと双璧をなすスケールの大きな営巣地です。
写真がそのコロニー。手前のヤナギ林の奥が川になっていて、その向こうに小高い丘があります。この丘の緑の濃い針葉樹の林がコロニーです。ちょうど営巣期に撮った写真で、巣にいるアオサギが白く点々と見えています。コロニーの立地環境としては申し分のないところです。
このコロニーがもうひとつ素晴らしいのは、地元の人をはじめ多くの人々が好意的に見守ってきたということです。じつは、写真の森も、以前の所有者が林を手放すことになった際、売却先によってはアオサギがどうなるか分からないということで、ある方がわざわざアオサギのために買い取ったものなのです。
ただ、そんな恵まれた環境をもつ名寄コロニーにもひとつ落とし穴がありました。数年前からオジロワシがたびたびコロニーを襲うようになっていたのです。これについては、アオサギのことを気にかけ、毎年のように記事を書いていた地元の名寄新聞がその様子を伝えています。3年前の記事です。⇒ 名寄新聞(2008年4月10日付け)
今年、ここにアオサギが飛来したのは4月4日だそうです。しかし、相変わらずオジロが徘徊してなかなか落ち着かなかったのだとか。そして、それからひと月あまり、名寄のサギたちはとうとうコロニーを放棄してしまいました。毎年毎年、執拗な襲撃を受け、もう限界だったのでしょう。これも先日、名寄新聞が報じていました。⇒ 名寄新聞(2011年6月9日付け)
このような大規模コロニーの消滅は、道内では4、5年に1度くらいの頻度であります。ここ20年ではっきり特定できているのは、91年のコムケ湖、97年の野幌、04年の浦幌、それに今回の名寄で4度目です。このうち、コムケ湖のコロニーについては今回と同じくオジロワシが原因と見られています。近年、オジロは内陸に勢力を拡げていますから、他のコロニーもうかうかできません。
もっとも、オジロがアオサギをいつも襲っているのかというと、そういうわけではありません。日常的にアオサギのコロニー付近にいても全く気に留めないオジロもいます。この辺は個体差が大きいようです。名寄の場合は当たりが悪かったとしか言えませんね。
自然の中で起こったこととはいえ、あれだけのコロニーが放棄されるのはやはりショックです。新聞にも書かれていますが、オジロがいる限り、来年、サギたちが戻ってくることはないでしょう。今後は次にどこで営巣するのかが焦点になります。場所によっては人とのトラブルが起きかねませんから。ただ、過去の事例を見ると、放棄後のサギはえてして人の生活圏に近いほうへ向かう傾向があるのです。道内でいうと、野幌森林公園内で営巣していたアオサギが、放棄後、札幌市街に3ヶ所に分かれて新たなコロニーをつくったのが良い例です。他にも同じような例はいくつもあります。逆に、さらに山奥に引っ込んだという話はひとつもありません。
あまり市街地に近くないどこか適当な場所に、名寄のサギたちが落ち着けるスペースが残されていることを期待したいものです。ワシに追われた上に人にも追われたのではたまりませんからね。