《注意》この記事はエイプリルフール用に書いたもので、内容は一から十まで全くの出鱈目です。騙されて読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
ずいぶん暖かくなりましたね。3月最後の1週間は一年でもっとも劇的に季節が変わるような気がします。そして、今日からはもう4月。すでに抱卵に入っているアオサギも多いのではないでしょうか。
さて、しばらく前からお知らせ欄に掲載していた「こんなアオサギ見たことない!」のコーナー。これが予想外に反響が大きく、全国各地から多くのアオサギの写真を送っていただきました。あらためて御礼申し上げます。写真がかなりの量(32枚)になりましたので、3月いっぱいでこのコーナーはひとまず終了することにします。皆さんの写真はきちんと整理した上で近日中に専用のページでご紹介するつもりです。お楽しみに。
ところで、今回は海外からも写真を提供してくださった方が何人もいらっしゃいました。たぶん当サイトを翻訳機能で自国語に直したのでしょうね。そこまでしてわざわざ読んでくれるとはありがたいことです。せっかくなので、そのうちのおふたりの写真をここで紹介したいと思います。いずれもかなり珍しく貴重な写真です。
まずはアイスランドから。アンナ・グズムンズドッティルさんの撮ったアオサギです。これは顔そのものが変なわけではありません。どのアオサギでもこのアングルで向き合えばだいたいこんな顔になるのです。変わっているのは瞳の色。本来、真っ黒なはずの瞳が、このアオサギでは青みがかった灰色になっています。じつはこれ、30年ほど前から知られていることで、アイスランドのある地域では普通のことなのです。
アンナさんによると、これを撮影したのはアイスランド西部、ヴォトロックル間欠泉の近くということです。青い目のアオサギたちの唯一の生息地として知られているところで、全世界でこの一角にのみ200羽ほどが確認されています。ただ、目の色は変わっても種が違うわけではないのですね。そればかりか亜種のレベルでも違わないのです。地理的に隔離されているわけでもなく、彼らは繁殖期には他の黒い目のアオサギと一緒に繁殖活動を行います。つまり、目の色以外は全て同じ。ただ、もうひとつ決定的に違うことがあります。
普通、アイスランドで繁殖したアオサギは秋になるとイギリス方面に渡ります。ところが、この小さな個体群は他のアオサギが去った後も冬じゅうアイスランドに留まるのです。アイスランドといえばその一部が北極圏にかかるほど北方にある国ですが、どうも間欠泉の周囲一帯は地熱で温められており越冬することが可能なようなのです。それにしても、目の色の違いで渡るか留まるかがはっきり分かれるというのもおかしな話です。普通に考えれば、目の色と渡りの行動との間には関連があるとも思えず、青い目のサギが渡ったり黒い目のサギが越冬したりしても良いはず。しかし現実はそうはなりません。
じつはこれについては遺伝学の分野でかなり研究が進んでいて、現在ではそのメカニズムがほぼ解明されています。詳しい内容については分かりかねますが、大雑把に言うと、目の色を決定する遺伝子と、渡りの衝動を促すホルモンをつくる遺伝子が染色体の極めて近い位置にあるため、染色体の交叉時にこれらの遺伝子が離れ離れになることがほとんどないということのようです。つまり、青い目と越冬するという表現型は常にワンセットということですね。
なお、青い目の形質は劣性遺伝のため、つがいが両方とも青い目でなければ青い目の子供は生まれません。越冬のほうも同じく劣性遺伝で、越冬個体どうしのペアでなければ越冬個体は生まれません。ただ、染色体の交叉時に両遺伝子が分離することが全く無いわけではなく、ごくまれに青い目のアオサギが渡りの群れに混じることもあるようです。ところが、イギリスで青い目のアオサギを目撃したという報告は未だかつて無いのです。おそらく南方の強い陽射しのもとでは色素の薄い瞳は致命的なのでしょう。
次はスイスから送っていただいた写真。ディディエ・ブランシャールさんのアオサギです。何と言えばいいのか、こんなアオサギは初めて見ました。頭の黒いラインがなくなるだけでこんなにイメージが変わるものなのですね。ディディエさんもここまで真っ白な頭のアオサギは初めてだったそうで、地元の新聞に写真が載った際にはかなり話題になったといいます。これだけインパクトがあれば、地元と言わず全国紙でも注目を集めそうですね。
ところでこのアオサギ、突然変異ではありません。もともとはありふれた風貌のアオサギだったはずなのです。つまり、いつの頃からかだんだん白くなったというのが真相。つまり、人間で言えば白髪になるようなものですね。ただ、そうとう長生きしなければこうはならないので、十数年生きれば長寿という野生のアオサギではまずお目にかかることはありません。
この白髪(形態学的には頭部白化と言うそうです)については滅多にあることでないのでほとんど研究されていませんが、唯一、ロンドン動物園で飼育下のアオサギを対象にした報告があります。そのアオサギは1965年、翼を負傷したところを保護されデイブと名づけられた雄の幼鳥で、以来、22年間、一度も動物園から出ることなくその長寿を全うしています。そして素晴らしいのは、デイブのほぼ全生涯にわたる形態上の変化が克明に記録されたこと。こういうところはイギリスらしいというか流石です。
その報告によると、デイブの頭部はおおよそ16、7歳の頃から次第に灰色っぽくなり、20歳前後でほぼ真っ白になったということです。ということは、写真のアオサギも少なくとも20年は自然界で生きているということになりますね。そう思って見ると、なんだか仙人のようにも見えてきます。それに、この歳になってもまだ鮮やかな婚姻色を呈しているところなど、野生の逞しさを感じるというか、まったく天晴れというほかありません。
ところで、ヴィヴィエさんによれば、このアオサギのいたレマン湖近くのシャテル・サン・ヴィーゴという村では、白頭のアオサギをテト・ブランシュ(フランス語で白い頭、そのままですね)と呼んで崇拝する風習が今も残っているということです。なんでも、白頭のアオサギを見た人は長寿を授かるのだとか。スイスに行かれる方はぜひ探してみて下さいね。
このおふた方の写真は今回とくに珍しかったので、一緒に添付されていた他の写真と合わせてギャラリー風のページを特別につくってみました。ここまで読んでもまだ寛容であられる方は是非ご覧いただければと思います。
『アンナさんとヴィヴィエさんの写真のページ』