タマゴ
- 2013年04月25日
- 生態
アオサギのヒナの誕生前線があるとすれば、現在は北海道を北上中というところでしょうか。その前線、少なくとも札幌付近までは到達したようです。札幌のコロニーで、今日、今シーズンはじめてヒナの声を聞きました。あの小さくか細い声は生まれてまだ数日というところ。道内の他のコロニーでもこれから次々と新たな命が誕生することでしょう。とはいえ、ヒナが生まれているのはごくわずかな巣のみで、この辺りのアオサギはまだほとんどが抱卵中。親鳥とは似ても似つかないエイリアンのような顔をしたヒナたちは、青緑色の卵の中で自分の順番が来るのを静かにじっと待っています。
ところで、卵のことを考えていてふと思ったのは、アオサギは雌雄一緒になって子供を産むのだということ。何を言っているのかと変に思われるかもしれません。要は見方の問題です。たとえば人などのほ乳類では、赤ちゃんが生まれるまでの過程は最初の一瞬を除きすべて母親に任されています。ところが、アオサギの場合、母鳥だけが関わるのは交尾から産卵までのほんの二日ていどのことに過ぎません。そこからヒナが生まれるまでの長い期間は母鳥も父鳥も一緒になって卵を温めるわけです。産卵というのは卵が母体から外界に排出されたというだけで、その時点ではあくまで卵。ヒナではありません。そこから長い抱卵期間を経てようやくヒナになって生まれてくるわけです。そう考えると、これは父母一緒になって産んだヒナとみなしてもいいのではないかと。巣にうずくまって卵を温める父鳥の姿を見ていると、彼もまた妊娠という行為に雌とともに参加しているのだと思わざるを得ません。そういう視点でアオサギを観察すれば、彼らの日々の行動にもまた違った風景が見えてくるように思えるのです。
折角なので、卵についてもう少し実のある内容を書いておきます。卵のことでまず気になるのは、いったい何個産むのかということではないでしょうか。これについては普通は3個から5個とされています。こういうのは調べる場所が違えば結果が異なるのが普通で、3卵がもっとも多いという報告もあれば4卵が多いという人もいます。そして、平均としてはだいたい3個の後半あたりの値に落ち着くようです。もちろん5個が最高ではなく、稀に6卵目を産むこともあるようです。記録としては10卵というのがありますが、これはちょっと尋常とは思えません。ホルモンのバランスを崩したか何か特別な生理的事情があったのでしょう。ちなみに、卵の大きさは長径が57〜61mm、短径が41〜43mmとされています。これは鶏卵のMサイズほどの大きさです。この大きさの卵を抱くのですから、あまり欲張ってたくさん産んでも抱えきれずに困ることになります。こちらの写真は、いまニューヨークでライブ中継中のオオアオサギの卵。5卵がちょうど上手い具合に両脚の間に収まっています。6卵まではなんとかなっても、それ以上増えると外にはみ出して一度に温めるのは難しくなりそうです。親鳥の腹の下のスペース的にも5卵ぐらいがちょうど良いということなのでしょうね。