秋の渡り
- 2013年09月28日
- 生態
渡りの季節ですね。急に涼しくなってそわそわしているアオサギも多いのではないでしょうか。
今回はそのアオサギの渡り時期について書いてみたいと思います。とはいえ、分かることはあまり多くはありません。ただ、北海道などではアオサギが渡ることははっきりしていますから、同じ場所に腰を据えて見ていれば、いつ頃渡るのかというのはおおよそ見当が付きます。
右の図は私が北海道の野付湾でアオサギを観察していた頃のもので、湾内に飛来するアオサギ個体数の季節変化を表したものです(グラフ上の点の種類は潮汐条件によって分けたものなのでここでは無視してください)。野付湾は水深の浅い湾で、干潮時にできる浅瀬はアオサギにとって絶好の餌場となります(下の写真)。おそらく、国内を探してもアオサギがこれほど高密度にいる餌場は無いのではないかと。そのくらい水面がアオサギだらけになるところなのです。
この地域ではアオサギは3月末に飛来し、4月から7月にかけて繁殖活動を行います。その間、遅れて渡ってくるのがいたりヒナが生まれたりで餌場の利用頻度は少しずつ上昇していきます。さらに幼鳥の巣立ち後はその分だけ餌場の個体数が増えることになります。それが8月頃の状況です。ここのサギたちは餌場が野付湾にほぼ限られるため、基本的にはこの8月の個体数がこの地域のアオサギの総数になります。ところが、面白いことに野付湾では9月になるとさらにアオサギの数が増えるのです。
この増加分はほぼ間違いなく他所からやってきたサギたちによるものです。つまり、この時点で秋の渡りが始まっているということですね。ただ、彼らがどこからやってくるのかは分かっていません。野付湾の北のほうには網走湖のコロニーなど大小のコロニーがいくつかありますから、そこのサギたちが知床半島を横切って野付に下りてくるのかもしれません。オオハクチョウなどは知床越えのルートを通っていますから、アオサギが同じことをしていても不思議ではありません。けれども、もっとありそうなのは国後や択捉からの飛来です。国後から野付はほんとに目と鼻の先。風に乗ってぱたぱたやっていればアオサギなら20分もかからず着いてしまうでしょう。
そんなわけで、9月の野付湾はもともといたのと渡って来たので800羽を超えるアオサギたちが集結することになります。けれども、そんなお祭りのような状態は長くは続きません。そんなにサギだらけではそこにいる魚たちも大変でしょうし。やがてサギたちはより南の水辺を目指して渡っていくことになります。ただし、ガンやハクチョウなどのように一斉にいなくなるということはありません。渡りは長い期間にわたって続き、遅いのは12月初めまで残っていたりもします。けれども、がんばってもそこまでです。それ以降は水面が凍って餌場になりませんから。
北海道の場合、アオサギの渡りはだいたいどこもこんな感じだと思います。ただ、北海道でも川が冬でも凍らないようなところは、とくに最近、越冬するアオサギも稀ではなくなってきました。餌が獲れさえすれば寒さは大した障害ではないのかもしれません。何と言っても自家製のダウンをしっかり着込んでいるわけですしね。
ともあれ、この先の季節、北海道のアオサギは減ることはあっても増えることはありません。季節が秋めいてくるにつれ北風に削られるように減っていきます。どこへ行くとも言わず、ただいなくなってしまいます。四国、九州あたりで留まるのか、それとも東南アジアのほうまで足を伸ばすのか。知りたくもあり、知らずにあれこれ思いを巡らすほうが良いようでもあり。ともかく、来春また元気で帰ってくることを願うばかりです。