オオアオサギのライブ中継
- 2017年03月31日
- その他
今年もまたアオサギの子育てシーズンですね。ここ札幌近辺のコロニーではつい先日巣作りがはじまったばかりですが、お住まいの地域によってはヒナがもう生まれているのではないでしょうか。シーズンになると私も近くのコロニーによく観察に行きます。けれどもよほど条件の良いコロニーでも100mも離れたところから双眼鏡やスコープで観察するのが関の山ですし、街中のコロニーは近寄れはするものの樹上を仰ぎ見るようなことになってしまい巣の中の状況はかえって分かりません。そんなわけで、子育ての様子やヒナの状況を細かいところまで観察しようとすると従来の方法ではどうしても限界を感じざるを得ません。それなら巣の近くにビデオを取り付けようというのが今回ご紹介するウェブカメラです。
これは今更紹介するほどでもないのですが、日本では営巣の様子を撮影するのを問題視する風潮があるせいか、いまいち馴染みが薄いように思います。ということで今回敢えて取り上げてみました。別に特段のことはなく、子育ての映像をネット上でライブ中継するというものです。海外のサギ類では少なくとも7、8年前にはすでに試みられていたように思います。当時からいろいろな団体、組織が各地で独自にライブ中継していました。そんな中、もっとも人気のあったのはニューヨークのコーネル大学が企画したものでしょう。これはオオアオサギを対象としたライブストリーミングで、2012年から2年つづけてシーズンを通してほぼ途切れることなく四六時中ライブ中継されていました。何が素晴らしいといって、子育ての様子がパソコンのディスプレイ上で間近にしかもリアルタイムに見られるのです。間近で観察して初めて分かることは多いですし、誰も見ていなくても連続して映像が記録されていることの科学的価値は計り知れません。ともかく、あの企画はオオアオサギへの理解を深めることに格段の貢献をしたと思います。当時のカメラ設置の様子などはこちらに記録されています。当時の映像は「great blue heron cam」などで検索すればいくらでも出てきますので、ご覧になったことがない方はぜひ見てみてください。
残念ながらコーネル大学のウェブカムは3年目にオオアオサギが巣に戻ってこなくなったため打ち切りになりましたが、オオアオサギについては現在稼働中のウェブカムは他にもいくつかあります。たとえばバンクーバーのスタンリーパーク。ウェブカムの映像はこのページで見られます。こちらはコーネル大学に比べるとかなり引いた映像となっています。というのも、コーネル大学ではカメラが巣の真横に付けられていたのに対して、スタンリーパークのほうはコロニーに隣接するビルの屋上に設置されたものだからです。写真のビルの屋上中央に白く小さく見えているのがカメラです。ここは子育ての様子を詳細に観察するというよりは、オオアオサギのことを少しでも多くの人たちに知ってもらい親しみをもってもらおうというのが目的のようです。なので、カメラは映像を見ている人が自由に動かせる仕様になっており、上記リンクページの映像画面から誰でも操作できます。
もっとも、見ていて興味がより持続するのはやはり間近に設置されているカメラだと思います。ただ、その場合はカメラを向けている巣にサギが来なかったらそのシーズンは棒に振ります。たとえば、東海岸のチェサピーク湾に設置されているウェブカムは現在このような映像で、説明がなければ何を撮ろうとしているのか分かりません。まだ時期が早いのでこれからここに巣をつくりはじめるかもしれませんが、このまま誰も来ない可能性も十分あります。賭けのようなものです。その点、スタンリーパークで設置しているカメラの映像は当たり外れがありません。コロニーが放棄されない限り、どっかこっかの巣は必ず見えますから。なお、スタンリーパークの映像は夜になると画面が真っ暗になりますので注意してください。今の時期ならこちらの夜11時頃にようやく明るくなって映りはじめます。