江別コロニー
江別コロニーは札幌の中心から15キロほどの所にあります。私にとっては自宅から手軽にアクセスできるコロニーということで、今もけっこう頻繁に観察に行っています。このコロニー、この場所にできてから今年でちょうど20年目になります。なぜはっきりした年数が分かるかというと、当時、すぐ近くの野幌にあった巨大コロニーが消滅したからなのです。このことは当時、新聞記事になるほどの騒ぎになりました。そんなことで、いなくなったサギたちの行方を多くの人が気に懸けており、江別で営巣しはじめたこともすぐ確認できたという訳なのです。
野幌のサギたちがいなくなったのはアライグマのせいだと言われています。おそらくそれは間違いないでしょう。野幌を去ったサギたちは札幌やその周辺にいくつか新しいコロニーをつくり、今も営巣を続けています。中には移った先で再びアライグマに襲わたところもありますが、兎にも角にも20年間コロニーを守り続けているわけです。江別コロニーはその時新設されたコロニーの中ではおそらく最大。営巣数は年によって多少の変動はあるものの、ここ数年は180前後で推移していました。
そんな江別コロニーですが、今シーズンはどうにも変なのです。シーズンも初めのうちはとくに異常は見られませんでした。ところが、そのうち巣が次々に放棄されていったのです。ヒナが生まれる前、生まれた後にかかわらず、歯止めが利かないかのようにぼろぼろと巣が空になっていきました。もちろん元気にヒナが巣立っていったところもあるにはあります。けれども、それはおそらく全体の2割にも満たないのではないかと。大半のペアは途中で営巣を止めざるを得ない状況に追い込まれてしまったようなのです。
問題はこの異常事態の原因が何なのかさっぱり分からないこと。20年前の野幌で起こった悪夢が繰り返された可能性もありますが、それにしてはサギたちの反応が穏やかなのが気になります。野幌の場合はほとんど一夜にしていなくなった感じでした。ところが、江別ではシーズンを通して徐々に徐々にいなくなっていくのです。それだけに一層不気味です。
今後、何か分かればまたここでもお知らせしますが、このまま謎のままで終わってしまうかもしれません。ただ、おそらく間違いないだろうと思うのは、このコロニーは近い将来、消滅してしまうだろうということ。じつは一昨年くらいから規模は小さいながら今回と同じような状況が見られていたのです。それが今年になってドカーンと。一連の状況を見ると、コロニーとしてもはや末期的なのかなと思わざるを得ません。杞憂であれば良いのですが。
営巣に失敗したサギたちが気の毒なのはもちろん、衰退していくコロニーもまた気の毒です。コロニーとしてまだたかだか20年。長年見てきたコロニーなだけにいっそう寂しいものを感じます。