アオサギを議論するページ

縁起の良い鳥

ここ1年ぐらい、ネット上で「アオサギは縁起が良い」と書かれているのをよく目にします。えっ、そんな話もあるんだ、と思っていろいろ調べてみるのですが、どの辺からそういう話が出てきたのかどうもよく分かりません。まあ、話の出所が分かったところで、迷信のようなものですから真偽も何も確かめようがないのですけど。

ところで、これに類似した話は、私も以前聞いたことがあります。それはアオサギそのものというより、アオサギが家の近くに巣をかけると縁起が良いというものです。これは十数年前、道東で牧場をされている御夫婦から伺ったお話です。御夫婦のご自宅前の林には数十つがいのアオサギが営巣しており、彼らはアオサギが毎年やって来るのを楽しみにしてるということでした。その御夫婦は自分たちの代で北海道に入植されたとのことでしたが、アオサギの言い伝えは内地にいた時から聞かされていたそうです。

というわけで、これは割と昔からある言い伝えなのかもしれません。それにしてもなぜアオサギがいると縁起が良いのでしょう? 考えられるとすれば、彼らが巣をつくることで、人がフンを肥料として利用できたということでしょうか。化学肥料の無かった昔、サギのフンは田畑の肥料としてずいぶん貴重なものでした。肥料をただで提供してくれるサギは有り難がられ、縁起の良い鳥とみなされるようになったということかもしれません。なにしろ、サギ山(コロニー)が出来るとその家は栄え、サギがいなくなると家は没落すると言われていたほどなのです。

ともかく、元となった理由が何であれ、こうした言い伝えが巷で囁かれているのは嬉しいことです。アオサギは縁起の良い鳥。その言葉に共鳴するものがなかったら誰も口にしないでしょうから。

【追記】道東の御夫婦のお話、改めて当時の記録を調べてみたところ、サギが巣をかけるとどうこうといった話ではなく、「サギが来なくなると良くないことがある」というのが正解でした。「サギが来ると良いことがある」の裏返しと言えばそうですが、逆だとネガティブな印象のほうが強くて多少ニュアンスは違ってきますね。ただ、伝承というのはそもそも根拠がはっきりしたものではないですし、情報の受け渡しが繰り返される中で、時とともに徐々に形が変わっていくのが普通なのだと思います。御夫婦に教えていただいたアオサギの話が十数年を経て私の中で変形してしまったのは、人々の抱くアオサギのイメージが最近どんどんポジティブなものに変わってきたことが影響しているのかもしれません。とかなんとか、結局、出所不明の民間伝承の強化に私も加担しているみたいですね。「アオサギは縁起が良い鳥」。十年、二十年後も、そう言われていれば良いなと思います。

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