鳥取市国府町の甑(こしき)山(標高110メートル)に大量のサギが住み着き、地元住民はふんや悪臭、鳴き声の被害に悩まされている。数百羽の集団に膨れ上がり、木々の枝を伐採したが、営巣は止まらない。効果的な対策が見いだせず、一方では保護を訴える声もあり、関係者は対応に苦慮している。
「チュ、チュ、チュとうるさくて」。甑山のふもとに住む村田勲さん(74)=同町町屋=は、夜に鳴き声で目覚めることがよくある。車はふんで真っ白になり、頭上に落ちることも少なくない。妻喜久栄さん(72)は洗濯物を室内に干す。窓を開けるとふんのにおいが鼻を突く。「何とかしてほしい」とため息をついた。
甑山の近くには清流があり、えさは豊富。周辺が開けているため、外敵を見つけやすい。市は「繁殖地としての好条件が整っている」と説明する。
住民によると、サギの営巣は20年ほど前から確認され、毎年、春から秋にかけて現れる。その数は年々増え、ふんは枯れ木の原因にもなっているという。サギの子育てラッシュが続く中、農作物の被害も深刻だ。福谷正義さん(66)=同町美歎=は「どうにもならん」とあきらめ顔。畑のスイカやトマトがつつかれていた。他の農家では田んぼの稲が踏み荒らされるケースもあったという。
行政に何度も陳情してきた住民らは昨年2-3月、市の補助を受け、業者に委託して約50本の木の枝を伐採した。だが、効果はいまひとつ。土砂崩壊につながるため、効果的とされる木の伐採は二の足を踏んでいる。また、県と市、住民らは2006年度から共同で対策を協議。甑山をネットで覆う、花火を打ち上げる、ライトを照らす…。さまざまな案が出たが、いずれも現実的ではなかった。
一方、通り掛かった同市青谷町内の男性(68)は「子育てを眺めるにはほのぼのといいのだが…。この自然を崩すべきではない」と指摘。市林務水産課によると、生息するサギの中には県の準絶滅危惧(きぐ)種もあり、捕獲は困難という。
国府町総合支所産業建設課は「卵を駆除するわけにはいかない。産むまでの対策が重要だが、現状ではお手上げだ。何かいい対策があれば教えてほしい」と話している。