鳥釣り禁止
- 2012年09月30日
- 保全
17世紀に書かれた『釣魚大全』(アイザック・ウォルトン著)という本があります。じつは、この本にはアオサギの釣り方が説明されているのです。と言っても、アオサギを釣ろうとして釣ったのではなく、釣りをしていたら餌の魚にたまたまアオサギが食いついたというのが本当のようですが。
ただ、こういうことは得てして起こりうることなんですね。とくにルアーは危険です。ルアーをアオサギが追いかけてきたとか、ルアーにアオサギがかかったという話はたまに聞きます。アオサギのことですからすぐにルアーを飲み込むことはないはずですが、ルアーに付いているフックが引っかかったりラインに絡まったりするリスクは無視できません。そんなことで二進も三進もいかなくなると、釣り人は手元でラインを切ることになります。そうすると、アオサギはルアーをくわえたまま、というよりルアーがとれないまま餌場を離れ、繁殖期であれば、その状態で餌場とコロニーを行き来することになるのです。実際、私がコロニーを調べたときには、巣からぶら下がったルアーや林床に落ちたルアーを複数のコロニーで何度も目にしました(写真は林床に落ちていたルアー)。決して希なことではないのです。
ルアーに限らず、仕掛けや釣り糸といった釣りの道具は鳥にとってはとても厄介な代物です。釣り糸がくちばしに巻き付くと餌が獲れず餓死することになりますし、釣り糸をくっつけたまま飛んでいると、そのうち木に引っかかって身動きがとれなくなったり宙吊りになったりで碌なことがありません。このような人工物によってアオサギが被害を被ったというニュースは国の内外を問わず頻繁に耳にします。例えば、国内だけを見ても、釣り針、釣り糸、サビキ、網、ヒモなど枚挙に暇がありません。
釣り糸や釣り針を捨てて帰るようなマナーの無い人は論外としても、釣りをしていると針が岩に引っかかったり、どうしても糸を切らざるを得ない状況は出てきます。その時に、どこまで鳥たちのことを思いやれるかが問われるのだと思います。簡単にブチッと切ってしまうのではなく、せめて最大限の努力をしてから切る、切った後で回収できるものは回収する、それで救われる命があるかもしれません。
それから、これは先ほどのルアーの場合ですが、万一、鳥が釣れてしまった場合には、ラインを切らずに鳥を釣り上げるべきだとの意見もあります。そして、釣って傷ついた鳥をすぐに救護センターに連れて行くのです(例えばこの記事)。ラインが絡まったまま悲惨な死に方をするよりは、釣り上げることで怪我をさせる怖れがあっても、そのほうが結果的に死に追いやるリスクは少ないということなのでしょう。