【江別】江別市内を流れる世田豊平川の河畔林で、今年もアオサギが営巣を始めている。近年、道央最大規模のコロニー(集団営巣地)を作っていたが、今期は飛来数が減少。アライグマの悪影響を心配する関係者は新たな対策を取り、抱卵を見守っている。(西野正史、写真も)
住宅地と幹線道路、工場などに囲まれた樹林帯。今月13日、くちばしに婚姻色の赤みを帯びたアオサギが点在していた。主に雌が巣を守り、雄が巣材の小枝をくわえて何度も飛んでいる。
「約50羽、22つがい。昨年同期の5分の1ほどしかいないですね」。北海道アオサギ研究会の松長克利代表(53)が声を沈ませた。例年約150つがいが営巣し300羽以上のヒナが巣立っていたが、昨年はわずか16羽ほど。営巣木の爪痕からアライグマが襲ったとみられる。「1年前に恐怖を味わった親鳥が、今季は姿を見せないのでしょう」
江別のコロニーは1997年、アライグマの脅威により約10キロ離れた道立野幌森林公園でアオサギが営巣を放棄し、引っ越してできたと考えられている。そのため、松長代表らは「被害を繰り返してはならない」と3月中旬、江別で初めての対策を試みていた。
営巣期を前に、研究会のメンバーが河畔林の樹木31本にトタン板を巻いた。板の表面は滑らかで、アライグマが登るのを防ぐ。北米で実績のあるこの方法は、野幌森林公園(97年)、岩見沢市(2012年)に次いで道内3例目という。早くて6月下旬、ヒナが順調に巣立てば、効果が確認される。
研究会によると90年代以降、道内各地でアオサギの営巣地は変わった。山間地の樹林に加え、住宅地に囲まれた場所やダム湖の水面、洋上の小島へと広がった。アライグマやヒグマなどの捕食者から逃れるため、安住の地を探しているかのようにも見える。
「江別のコロニーも人間の生活圏にある避難所みたいな場所」と松長代表。「ここを放棄したアオサギはより人間側に入り込み、鳴き声やふんの害で駆除されかねない。それを防ぐためにも、このコロニーを守りたい」と話している。