浜松市の佐鳴湖で、釣り人のルアー(疑似餌)が後頭部に刺さり、くちばしに食い込んだアオサギが見つかり、佐鳴湖公園を管理する北岸管理棟(同市中区)が、疑似餌を禁止にするなど再発防止に乗り出した。捨てられた釣り糸が野鳥に絡まって負傷するケースは全国で頻発しているが、鳥類の保護団体は「ルアーでの負傷はあまり聞いたことがない」としており、愛鳥家らが釣り人のマナー向上を呼び掛けている。
管理棟の責任者、矢島広之さん(51)によると4月3日、佐鳴湖に隣接するひょうたん池で「くちばしにルアーがからまった鳥がいた」との情報が寄せられた。その後も同様の情報が複数あり、矢島さんも目視で確認した。アオサギは体長約90センチの成鳥とみられる。くちばしから後頭部にかけて長さ10センチほどの魚形のルアーの針が数カ所に刺さり、くちばしの横に固定されていた。
佐鳴湖は淡水と海水が混じる汽水湖だが、ひょうたん池は淡水で、ルアー釣りの対象魚のブルーギルやブラックバスが多く生息する。浜松野鳥の会の共同代表、河合孝佳さん(54)は「一概には言えないが、切れて放置されたルアーを餌と思ってのみこもうとしたのでは。くちばしが開かず、餌を捕れなくなっていた可能性が高い」と指摘する。
通報から2週間が過ぎた同19日、このアオサギを目撃し、写真撮影した岩瀬泰雄さん(70)=中区佐鳴台=は「弱っていて動かず、かわいそうだった」と話す。その後の消息は分かっていない。
今回の件を受け、管理棟は先月中旬、野鳥保護のため、ルアーの使用禁止を決め、釣り人に知らせる看板を池周辺に設置した。しかし、市都市整備部によると、ひょうたん池を含む佐鳴湖公園では条例で釣りが許可されており、今回のルアー禁止に法的拘束力はない。看板設置後もルアーで釣る人は後を絶たず、矢島さんは「生態系の保護は重要だが、マナーに訴えるしかない」と話す。
日本鳥類保護連盟(本部・東京都杉並区)によると、釣り糸などが絡まった鳥は全国的に目撃されている。同連盟は統計はとっていないが、釣り人が多い5月から10月まで切れた糸などを拾う活動をしている。
担当者は「釣り糸が翼に絡まって飛べなくなったり、足に絡まって壊死(えし)したりするケースもある。ルアーでの負傷はあまり聞いたことはないが、釣り人は切れた糸や、ルアーをきちんと持ち帰るようにしてほしい。被害に遭った鳥を目撃した場合は、無理に取ろうとすると傷つける可能性があり、自治体に連絡して」と呼び掛けている。
(糸井絢子)