樹齢300年以上のクスノキやムクノキの巨樹が並び、県の天然記念物の指定を受けている岩国市楠町のクスノキ群にアオサギが集団ですみつき、繁殖のためのコロニー(巣)を形成している。
一帯は市民の憩いの場であり、頭上から落ちるふんや餌の残りかすは住民や、いせきを通行する市民に不快な思いをさせるだけでなく、ふんがリンの成分を多く含むため、クスノキを枯らす原因にもなるという。アオサギは鳥獣保護法で繁殖が守られている野鳥。市文化財保護課は「駆除はもちろん、追い払うこともできない」と、いずれも保護対象物とあって、板挟みの状態に頭を抱えている。
同所は川下デルタの頂点で、錦川が門前川と今津川に分岐している。クスノキ群は岩国藩時代に堤防を守るために植えられたという。現在では高さ30メートルを超す古木になり、1980年4月に県の天然記念物に指定された。いせきの周辺に豊かな木陰を作り、有数の水辺の空間として市民に愛されている。
クスノキ群では、以前からノバトやヒヨドリなどが営巣していたが、大型鳥のサギ類の営巣はこれまで無かった。今年3月末ごろから、アオサギの群れが枝類をくわえて巨木の上を飛び交う様子が観察されていた。現在はクスノキの頂点部分に十数個の巣ができ、繁殖活動が見られるようになった。
サギ類は樹木に集団で営巣して子育てを行う。同市は、かつて「シロサギの集団渡来地」(繁殖地)として天然記念物指定を受けたが、集団営巣の周辺では、ふんや食べ残したえさ(小魚など)の腐敗臭、鳴き声などが嫌われ、一部で住民が追い払ったことや、宅地化の進展で営巣に適した場所が減って、サギ類が分散して営巣するようになったことで、93年5月に天然記念物指定が解除された。アオサギも、繁殖場所の減少に伴い、クスノキを繁殖地に選んだらしい。
市文化財保護課は県に現状を報告、対策を協議しているが、アオサギはすでに繁殖時期に入っており、駆除は法的に難しいことが分かった。現時点では巣の数も少ないため、「ただちに枯れるような恐れはない。アオサギは、ヒナが巣立てば、その場から離れるため、ふん害が出るのは繁殖時期に限定される」として、当面は見守ることにした。ただ、周辺住民への影響も考えられるため、「監視態勢を強化、県とも協議しながら文化財保護の観点から対応を検討する」としている。