世界の要人が集う京都迎賓館(京都市上京区)の日本庭園にサギが毎日のように飛来、池のニシキゴイの稚魚をつまみ食いしている。最近はカワウも時折訪れ、コイを狙うようになったが、景観上の理由から池に防鳥ネットは張れず、同館事務所は「しばらく成り行きを見守るしかない」と話している。
日本庭園は、晩餐(ばんさん)室や会議室などに囲まれて迎賓館の中央にあり、桜守で知られる佐野藤右衛門さんが造園の棟梁(とうりょう)を務めた。池には松を配した亀島があり、各部屋や廊下からニシキゴイが泳ぐ様子が見える。ニシキゴイ発祥の地で、新潟中越地震(2004年10月)で被害を受けた旧山古志村(現長岡市)から、被災地支援の一環で取り寄せたコイ110匹を放った。
サギは、開館半年後の05年秋から見られるようになった。近くの鴨川から飛来するようで、アオサギのほか、ダイサギ、ゴイサギも時折見られるという。赤や紅白など多彩なコイのなかで、目立つ金色が狙われやすく、迎賓館によると、1羽につき1日1匹程度の稚魚を食べているようだという。
一昨年11月の日米首脳会談でブッシュ大統領が訪れた際も、和室で小泉首相と昼食中にアオサギが飛来。思いがけない野鳥が大統領を喜ばせたが、テロ警戒の厳しい警備体制のためか、その時は稚魚を取らずに飛び去ったという。
全日本錦鯉振興会(事務局・新潟県)によると、サギは稚魚を食べたり病気を媒介するなど、養殖のコイにとっては「害鳥」。養殖業者はいけすにネットを張るなどしているという。
今年4月には、食欲旺盛なカワウが飛来しているのが見つかった。このときは職員が大声を出して追い払ったが「カワウは水面下に潜って根こそぎ食べるので、サギより厄介」(ニシキゴイ愛好家)との指摘もある。
現在、池のコイは、自然死などで約90匹。同事務所は「庭園の池に新たな生態系が生まれ、鳥たちの憩いの場所になっているのはうれしい。サギも稚魚を食べ尽くしはしないはず。ただ、カワウは想定外。野鳥とコイが共生していけば」と見守っている。