京都新聞
2009年6月11日
舞鶴湾に浮かぶ「乙礁神社」取り壊しへ 国際ふ頭工事で余波
京都府舞鶴市下安久の舞鶴湾で建設中の「舞鶴国際ふ頭」の近くにある竜宮城のような建物が、通行人らの目を楽しませている。50年ほど前、地元住民が観光誘致を狙って建てた。海にぽっかりと浮かぶ姿に足を止めて見入る人も多いが、ふ頭の2期工事で取り壊される見通しで、地元では惜しむ声も聞かれる。
建物は舞鶴国際ふ頭の東約10メートルにあり、高さ約6メートルのコンクリート製。地元によると、1957年ごろ、元市議らが観光地としてPRしようと手作りし、一帯にバンガローやボート乗り場を設けて活性化を目指した。付近の浅瀬が「乙礁(おとぐり)」と呼ばれることから「乙礁神社」と名付けた。
事業は頓挫したが、放置されながらも半世紀以上持ちこたえ、今では地域のシンボルともなっている。屋根の部分はアオサギが小枝などを運び、巣にしている。
ただ、府によると、乙礁神社がある場所は、舞鶴国際ふ頭の2期工事部分にあたるため、工事が事業決定されると取り壊される可能性が高いという。
地元の匂崎自治会の南部照一会長(66)は「(先人は)きれいな自然や郷土を愛する気持ちから乙礁神社を建てたのだと思う。ふ頭工事で取り壊されるのは仕方ないが、なくなってもその気持ちは忘れずにいたい」と話した。