鶴岡市内でサギによるふん害や騒音などの被害が相次いでいる。市中心部の寺院では、境内の樹木に防鳥用の風船を設置するなど、あの手この手の策を講じているが、関係者は「被害はいっこうになくならない」と頭を悩ませている。巣ができた樹木を伐採するなど本格的な防止策に乗り出した神社もあるが、「市街地から緑が減っていくのは残念」と嘆く市民の声もある。
サギは、長い脚とくちばしが特徴。川や水田を餌場にして魚や両生類を食べる。山形大農学部で昆虫環境生理学を専門とする後藤三千代客員教授によると、サギは群れをつくる習性があり、5月から8月下旬にかけて繁殖期を迎え、樹木などに営巣するという。繁殖後は群れを解くため、被害は一時的なケースが多い。後藤客員教授は「近年進んでいる河川改修などにより、河川近くの営巣場所が少なくなったため住宅街に多くすみ着くようになったのでは」と指摘する。
鶴岡市環境課によれば、市民からのサギによるふん害や騒音の苦情は寄せられていない。サギの飛来数の推計はなく、駆除は検討していないという。サギの被害を防ぐ対応策として、同課は▽営巣された樹木を伐採する▽樹木を防鳥ネットで覆い、営巣を防ぐ▽飛来した際、爆竹などを使って警戒する−などを挙げ、「これらを複合的に組み合わせて実施するのが効果的だと思う」と話す。
しかし、市中心部の寺院などではサギによる騒音などが後を絶たない。同市睦町の常念寺では、サギの集団が今年5月ごろから境内のスギにすみ着き、騒音やふん害が目立ち始めた。「6月には境内上空が一面サギの群れで覆われるほどだった」と渡辺成就住職。これを受けて、カラフルな風船を樹木に付けてサギの警戒心をあおるように工夫したが、一時的に若干飛来数が減ったものの、最近は徐々に個体数が増え始めているという。
同寺は今後、檀家(だんか)から数百万円ほど寄付を募り、9月以降に境内にあるスギやイチョウなど約100本のうち7割ほどを伐採するという。同寺の近所住民からは「夜も眠れないほど鳴き声がうるさい」という声もあり、渡辺住職は「サギが巣を作らないため、樹齢100年を超える大切なスギを切らざるを得ないことに歯がゆさを感じる。なるべく緑を残しながら、効果的に対策を講じていければ」と頭を抱えている。