養魚場での魚の捕食が問題になっているアオサギの集団営巣地が県内に29カ所あることが、県環境保全研究所(長野市)の調査で11日までに分かった。堀田昌伸主任研究員らのグループが2007年3月〜09年5月、日本野鳥の会会員による目撃情報などを基に各地を訪ね、樹上の巣を目視で数えた。同研究所によると、全県が対象のアオサギの生息調査は初めて。千曲川、天竜川、犀川沿いを中心に生息域を拡大しているとみられる。
調査によると、29の集団営巣地に計718個の巣を確認した。最も多かったのは安曇野市穂高の134個で、次いで千曲市雨宮の129個、佐久市中込の63個など。上水内郡信濃町の野尻湖周辺や飯山市常盤周辺でも50個を超える巣が確認された=地図。
アオサギは体長1メートル前後で、日本に分布するサギ類の中で最も大きい。河川や水田で魚やカエルなどを食べるが、近年は養魚場でニジマスやコイなどを食べる被害が目立つ。県農政部園芸畜産課によると、08年度、アオサギやゴイサギなどサギ類に食べられた養魚場の魚の量は16.9トン、被害額は約2千万円に及ぶ。
県野生鳥獣対策室は昨年9月〜今年1月に、県内全市町村や各地の漁業協同組合などを対象にアンケートを実施。サギ類による漁業被害や騒音、樹木の枯死などの被害は、78市町村のうち52.6%の41市町村、漁協は30団体のうち76.7%の23団体から報告があった。
同対策室によると、アオサギの営巣地は1980年代までは県北部に数カ所あった程度とみられる。増加の原因は詳しく分かっていないが、被害地で追い払うと周辺地域に分散する−といった事例が確認されているという。
堀田さんは「アオサギは全国で増加傾向にあり、県内で抑制対策をしても、他県から移ってくる可能性が高い。隣接県などと連携した取り組みが必要だ」と指摘している。