アオサギを議論するページ

シーズン最終盤

7月も終わりますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
札幌あたりではアオサギの子育てシーズンもそろそろ終わりです。コロニーにボーリングのピンのように突っ立っていたヒナたちも、ここ一週間くらいでぱたぱたっといなくなってしまいました。今は全盛期の1割残っているかどうかというところです。

この時期になると、残っているヒナもあちこち飛び回り、コロニーでは様々なことが無秩序化します。ヒナが自由に飛べるため、親から十分餌をもらえなかったヒナが親の後を飛んで追い回すとか。しかも、それが本当のヒナならまだしも、自分の子か余所の子かさえよく分からなくなっている様子。ヒナのほうは自分の親でも余所の親でもとにかく餌がもらえればいいのでしょうけど、親のほうはやりきれないでしょうね。

そんな狂騒状態が見られるのもあと数日。ぼろぼろになった巣も、その巣を支えてきた木々も、来年の3月までひとまずお役ご免です。

巣作り開始

江別コロニーのその後。16日は20羽弱だったアオサギが、17日はコロニーに38羽、ねぐらに6羽と一日で倍増しました。17日は適度な南風があったので風に乗ってやって来たのですね。これからも南風が吹くたびにどんどん渡ってきそうです。

コロニーでは、早いところはすでにペアができて巣作りも始まっています。この時期、雪に覆われた地上で巣材を見つけるのは大変です。ただ、今なら誰も使ってない巣が周りにたくさんありますから、使い古しの巣材でよければ簡単に調達できるのです。

ところで、アオサギの巣は雪の重みで落ちてしまうのもあれば、春までしっかり残るのもあります。どのくらいの巣が残るかは、その地域の気象条件や使われる巣材のタイプによって変わるはずでます。比較的、積雪量の多い江別コロニーの場合だと、すっかり無くなるのは全体の2、3割といったところ。残りは多かれ少なかれダメージを受けながらも何とか枝にしがみついています。

さて、春先、早くからコロニーにやってくるサギたちは早いもの順に営巣場所を選んでいきます。多くは残っている巣にまず陣取るようですね。ところが、使われていない空巣が周りにあっても、敢えて何も無いところに一からつくり始めるペアもいます。手間をかけても自分の好きなところに巣をつくりたいのでしょう。手っ取り早いからといってガタの来ている巣を適当にリフォームして、ヒナが生まれた頃にばらばら崩れたのでは後悔してもしきれませんからね。最初から自分でつくったほうが後々安心できるのかもしれません。あるいは、巣があろうが無かろうが、ともかくこの場所が好きなんだということかもしれません。ロケーションは大切です。何も考えずに適当なところにつくったら、あとあと隣近所との関係が面倒なことになりかねませんから。

パンの利用法

友人から新聞の切り抜きが送られてきました。右の記事は今月9日の朝日小学生新聞に載っていたものだそうです。ミニ図鑑とありますから、単なるアオサギの紹介かと思いきや、かなり特殊な事例が書かれていたので驚きました。まあ、そうでなければ、友人がわざわざ送ってくるはずもないのですが。

たしかに日比谷公園あたりだと人馴れした野鳥も多そうですね。おそらくアオサギも例外ではないのでしょう。けれども、いくら人に馴れているとはいえパンを食べるのはどうかと思いますよ。

彼らは基本的に魚食性の鳥です。ただ、魚が全てというわけではありません。エビやカニ、オタマジャクシといった水生の動物はもちろん、バッタやトンボなどの昆虫、ヘビやネズミ、仔ウサギ、果ては水鳥のヒナや小鳥類まで、ともかく口に入るものなら何でも飲み込みます。けれども、それは生きている動物に限ります。たまにエサをうまく獲れない幼鳥や保護された個体が、死んだものや、場合によっては加工されたものを食べることはありますが一般的ではありません。もしそれを考慮に入れたとしても、彼らの食べ物が動物の肉であることには変わりはありません。肉食であるという点は彼らの本性として譲れないもののはずです。それを何を思ったのか、パン、で大丈夫なのでしょうか? のどごし云々の話ではないと思うのですが…。

ところで、パンと言えば、オオアオサギの行動に関して興味深い話があります。こちらはオオアオサギがパンを擬似餌として利用したというもので、1998年にColonial Waterbirdsという雑誌に掲載されています(Zickefoose, J. and W. E. Davis. 1998. Great Blue Heron (Ardea herodias) uses bread as bait for fish source. Colonial Waterbirds 21:87–88.)。擬似餌漁というとササゴイが有名ですが、このオオアオサギの場合は積極的に自分でパンを撒くのではなく、人が水面に投げたパンの近くに行き、魚がパンにおびき寄せられるのを待つというやり方のようです。著者はこの行動について、ササゴイに見られるような、パンを自ら運び水面の適当な場所にセッティングするという、より積極的な行動への移行過程であると説明しています。なお、このオオアオサギは、人が投げたパンの最初のひとかけらは口に入れたそうです。ただし、その後は他に浮いたパンがあっても食べようとしていません。パンが食べ物だとは認識しなかったのでしょうね。

ササゴイによる正真正銘の擬似餌漁はこちらのビデオで見られます。
さて、近い将来、同じような行動がアオサギにも見られるようになるのでしょうか? 少なくとも、パンがアオサギの餌メニューに加わることよりは現実味があるような気がするのですが…。

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