アオサギを議論するページ

四兄弟の運命

皆さんのところのアオサギのヒナはもう大きくなったでしょうか? 2月頃から卵を温めているところだと、すでに巣立ちも終えているのではないかと思いますが、いかがでしょう?

ここ北海道のヒナたちは巣立ちにはまだほど遠く、親鳥が付きっきりという巣もまだけっこうあります。親鳥が巣を離れはじめるのは、ヒナの誕生後だいたい3週間ほど経ってから。写真の兄弟は大きいヒナでまだ2週半ぐらいですから親鳥もまだしっかり付き添っています。写真の左上に見えているのが親鳥の胸の飾羽ですね。

ところで、この4羽兄弟(1羽は手前のヒナの陰になっています)、ご覧のようにずいぶん大きさが違います。一般にアオサギは1日置きに卵を産むので、4卵の場合は最初の卵と最後の卵では1週間ほどの開きがあります。もっとも、親鳥は1卵目を産んだ後すぐに温めはじめるわけではないので、孵化する時期のズレは多少縮まります。けれども、成長の早いヒナのこと、わずか数日誕生日が違うだけで体格に歴然とした差ができてしまいます。

このぐらいの大きさの4羽兄弟だと、大きなヒナが1羽と、若干小さめのヒナが2羽、そして格段に小さなヒナが1羽という構成が多いようです。大きなヒナが2羽でやや小さめのヒナが1羽の場合もあります。でも、やはり最後の1羽はぐんと小さくなります。そして、こうなると小さな1羽は生きることがとても難しくなるのです。大きなヒナたちは大きな口と大きな体でますます多くの餌を食べ、小さなヒナはその残りを細々食べるしかありません。それでも餌が十分にあるうちはまだ良いのですが、少しでも餌が不足しはじめると大きなヒナは小さなヒナを執拗に虐待して餌を独り占めしてしまいます。こうなると小さなヒナが生き延びる余地はありません。残念なことに虐待されているヒナを親が助けることはありません。残酷な言い方をすれば、4羽目のヒナは親鳥にとって予備のようなものなのです。これは4羽兄弟に限ったことではなく、5羽の場合も3羽の場合も一番小さなヒナから順に犠牲になっていきます。いずれにしても早く生まれることが決定的に優位な世界なのです。 もちろん、このような悲劇はいつも起こるわけではなく、最初のサイズが違ってもだんだん追いつき、4羽、5羽と兄弟全員が元気に育つこともあります。写真のちょうどこのぐらいの大きさが一番危険なとき。もう一週間ぐらい我慢すれば4羽目が生き延びる可能性はぐんと上がると思います。なんとか親鳥にがんばってもらいたいものです。

さて、話は変わりますが、ふと思い立って「アオサギ写真集」を一新してみました。過去の記録を調べてみると、少なくとも6、7年は何も手を加えてなかったようです。新しいページは左のサイドバーの一番下からもリンクできるようにしています。よろしければご覧になってください。

回復力

写真は首を負傷したアオサギです。最初見かけたときは首が大きくえぐられたのかと思ってぎょっとしましたが、よく見ると羽毛が無くなっているだけなんですね。首そのものにもいくらかはダメージがあると思われますが、少なくとも見かけよりは軽傷で済んでいるようです。

それにしてもこの首の細さはびっくりです。がっしりしているように見えても、そのほとんどは羽毛なんですね。道理で体重が軽いわけです。あの大きな体でたった1.5キロしかありません。

なぜこのような怪我を負ったのかは分かりません。もしかしたら、アオサギ同士で激しい喧嘩をしたのかもしれませんし、あるいは、木の間越しを飛んだ際に枝で擦りむいたのかもしれません。いずれにしても、ちょっとした怪我がすぐに命取りになる野生の世界です。見かけは元気そうでもやはり心配でした。

そして、そのひと月後の同じアオサギです。羽毛が新しく生え、傷口はもうほとんど目立たなくなりました。すばらしい回復力です。

実はこのアオサギ、このコロニーの中ではかなり早くから営巣を始め、猛禽の度重なる襲撃をかいくぐって今では4羽のヒナを育てているとても優秀な親鳥なのです。それを思うと、あの首の怪我も、卵を守ろうと猛禽に立ち向かった名誉の負傷なのかもしれないなと想像したくなります。

若すぎるペア

ヒナが生まれはじめ、ヒナの声も小さく聞こえるようになった札幌周辺のアオサギコロニーですが、ヒナが生まれる一方でこれから巣づくりというペアもいます。北海道あたりでは、つがいにより営巣開始時期にひと月以上のズレがあります。そして、遅い時期に巣づくりを始めたペアには成鳥の羽になり切っていないアオサギがかなり多く混じっています。

写真はそんなつがいのひとつ。一応、ちゃんとしたつがいなのですが、まだ巣がありませんし、たまたま2羽が離れているのでペアのように見えないかもしれません。そして、何よりもペアらしく見えないのは左のアオサギが成鳥ではないという点。明らかに1年目の幼鳥のようです。

通常、アオサギは生まれた翌々年から繁殖に加わり、1年目で営巣することはまずありません。なので、これはかなり稀なケースです。ただ、生殖能力は1年目から具わっているので、繁殖が不可能というわけではありません。不可能ではないのですが、やはりヒナを育てる能力ということになるとまだまだ不完全なようです。実際、1年目でうまくヒナを巣立たせた例を私はまだ見たことがありませんし、おそらく成功したという報告も皆無なのではないかと思います。たぶん、経験のない幼鳥では抱卵や給餌そのものはある程度やれても、自分の餌を獲るのが精いっぱいで、ヒナの分まで面倒をみる余裕は無いのでしょう。

さて、このつがい、どこまでがんばれるでしょうか?

遅れたものの例年並

4月ももう終わりだというのに、激しく雪の舞った昨日の札幌。ヒナが生まれはじめているこの時期に、雪や雨、さらには強風と、全く思いやりのない天気が続きますね。

ところで、北海道のアオサギの個体数が今年は少ないということを先日書きましたが、どうも飛来時期が遅かっただけのようです。春先から遅め遅めに季節が進んでいますから、サギたちもそれに合わせてゆっくりめに行動を起こしているのでしょう。少なくとも私がよく見ている江別コロニーは例年並の営巣数にほぼ回復しました。数日前に見た時でおよそ160巣。この先は増えても10巣がいいところだと思います。

すでにヒナが生まれているところもあれば、まだ1本目の巣材を置くのに四苦八苦しているところもありますが、ともかくこれで今年のメンバーはだいたい揃いました。全体的にやや遅れ気味のシーズン序盤でしたが、これからは木々の芽吹きとともにいつもどおりの賑やかさ(騒々しさ?)となりそうです。

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