降り止まぬオタマジャクシ
- 2010年07月22日
- その他
オタマジャクシが空から降ってきたと全国的に話題になったのは去年の6月でした。あれから1年。騒動はまだ完全には収まっていないようです。6月1日付けの下野新聞に昨年同様の記事が載っていました。
そもそも未だにこのことがニュースになるのは、事の真相に関して世間的な評価が確定していないからだと思います。マスコミはあれやこれやの専門家に尋ねますが、専門家といえども実際に現場を目撃していないわけですから断定的な結論を出せるはずはありません。おそらく、空を飛んでいる鳥がオタマジャクシを吐き戻すのを実際に目撃 したという人が現れない限り、この件は今後もうやむやな状態が続くでしょうね(今回の件とは別に、飛び立ったサギ類が餌を吐き出すのを目撃した事例はあります⇒ 岩手日報 2009年6月18日)。
とはいえ、私の中ではアオサギ、もしくは他のサギ類が犯人だろうというのはほぼ確定しています。百歩譲っても鳥類のいずれかであることは間違いないだろうと。
鳥の仕業だとする説は当初からありました。しかし、鳥のことに詳しそうな人の中に鳥犯人説に異論を唱える人がいたのですね。それで話がややこしくなってしまいました。たとえば、1羽のサギがそれほど大量のオタマジャクシを食べられるはずがないと言う人たち。
いしかわ動物園(能美市)
「100匹以上を一斉に同じ場所に落とすとは考えられない」(朝日新聞 2009年6月18日)
名古屋市野鳥観察館
「100匹は量が多い。そんなに一度に飲み込めるだろうか」(中日新聞 2009年6月18日)
日本野鳥の会県支部丹南ブロック
「オタマジャクシを30匹も吐き出すというのでは数が多すぎる」(毎日新聞 2009年6月19日)
もちろん、この方々の疑念は的を射たものではありません。アオサギの咽にかかればオタマジャクシ100匹ぐらいは朝飯前です。ただ、これらのコメントは記事を読む人の判断にそれほど大きな影響を与えたとは思えません。私が今回の件を迷宮入りさせた張本人だと思うコメントは次のふたつです。
ひとつめは日本野鳥の会(東京)のコメント。
「オタマジャクシは鳥にとってまずい食べ物」(中日新聞 2009年6月9日)
どなたが言ったのか知りませんが、これはいけませんね。他の鳥のことはいざ知らず、少なくともアオサギは普通にオタマジャクシを食べています。これについては 内部からも批判の声が上がっているようで、神奈川支部は会報「はばたき」(2009年8月号)で次のように上記コメントを非難しています(日本野鳥の会 支部ネット通信より)。
新聞紙上で野鳥の会のコメントとして「オタマは鳥にとってまずい食べ物で、栄養価も低い」とあり、これは適切なコメントでない。
もうひとつは山科鳥類研究所の平岡氏のコメントです。
「大きなサギなら100匹を捕獲することもあるだろうが食べた物は消化され、吐き出したら団子状になっているはず」(朝日新聞 2009年6月10日)
これは観察が足りないと言わざるを得ないでしょう。たとえばアオサギの場合だと、親がヒナに餌を吐き戻すとき、その多くは未消化でばらばらに出てきます。たしかに消化されていることも団子状になっていることもありますが、それはひとつの状況でしかありません。
新聞の短い文面からはこれらのコメントをされた方がどのていどの確からしさを持って話されたのか判断するのは難しいですが、文面通りに受けとるとこれは甚だ無責任なコメントです。分からないなら分からないと正直に言うべきでした。
結局のところ、鳥説を否定できる要素は何も無いということです。であれば、空で鳥が吐いたと考えるのが一番無理が無いように思えるのですが…。