食としてのサギ
食としてのサギ
2003/07/14(Mon) 20:56 まつ@管理人 王様の料理
すぐ下の書き込みで引用した「ゴールドスミス博物誌」ですが、食材としてのサギについても多少触れた部分がありましたので紹介したいと思います。
「サギは我がイギリス人の口にはまったく合わないが、フランスではたいそう需要があって、とくに若鳥の肉は珍重されるのである。」
この本が書かれたのは200年以上も前のこと。当時、フランスではサギを食べていたが、イギリスでは食べていなかったということです。しかし、実はもっと昔に遡ればイギリスでもサギを食していた時期があったのです。著者もその辺は分かっていて、
「昔はサギの肉も食べ物として大いに珍重され、貴族たちの食事で馴染みの料理であったものだ。その頃は、サギの肉は王様の料理と言われていた。」
と書いています。それにしても、昔それほどの食材であったものが、時を経るにしたがい「それに手を触れようというのは猫ぐらいのものだろう」と言われるまでに見方が変わったのには驚きます。その昔、王侯貴族によって行われていた鷹狩り(サギを標的としたもの)が廃れ、サギが手に入らなくなったことが大きな理由だと思われますが、しかし、それはフランスにしても同じこと。この本が書かれた当時のフランスでは、狩猟以外の方法を工夫してせっせと若鳥を捕獲しています。このあたり、イギリスとフランスの食に対するこだわりが垣間みれて面白いですね。
いずれにしても、この食文化が現代に引き継がれなかったことはサギにとっては幸せでした。
2002/11/28(Thu) 07:33 まつ@管理人 15世紀の食卓
「シェイクスピアの鳥類学」によると、鷹狩りの獲物として捕らえられたアオサギは、王族の宴会や祝宴などでは必ず珍味として食卓にのぼっていたそうです。一例として、15世紀後半の記録が引用されており、ヨーク大司教推戴式の祝宴では400羽ものサギが食卓に供されたと書かれています。しかし、捕りすぎて少なくなったのでしょうか、16世前半のイギリスでは国会制定法によってサギは保護鳥とされ、卵を窃取すると刑罰が科せられるようになりました。さらに17世紀に入ると、サギの繁殖地から600歩以内で銃を使用することが禁止され、違反者には20ポンドの罰金が科せられています。その後時を経て、鷹狩りが廃れるとともにサギを食べる習慣がなくなったのか、サギがいなくなったのか、その辺の事情は分かりませんが、サギが料理として出されることはなくなっていったようです。この本によれば、料理用としてサギの名が記された最後の記録は1812年であるとされ、この本が出版された1864年頃には、もはやサギ料理は献立表にも載ることがなく、当世風の料理ではなくなっていたということです。
鷹狩りの危険にさらされつつも比較的安定した生息環境が保たれていた当時と、人に食べられる心配はないけれども、営巣地も餌場も翌年の状態すら保証されないような混沌とした現代、サギにとってはどちらが暮らしやすいのかなと、ふと考えてしまいました。
2001/07/22(Sun) 21:07 まつ@管理人 サギを食べる国
アオサギを食べる。こう書くと皆さんぎょっとするでしょう。自分でもあまりいい感じはしません。その上、アオサギは雑食性(悪食?)なので味はひどいものだと思います。けれども、地球上ではサギを食べている国もあるのです。
アフリカでの見聞。向こうにはアオサギとよく似たズグロアオサギというサギがいます。アオサギとほとんど外見はいっしょです。私のいた田舎町では一本の孤木に十数つがいが営巣していました。営巣木は銀行とマーケットの間にかろうじて残されている木で、田舎町とはいえ、ひっきりなしに人通りのあるところでした。たまに何かのアクシデントでヒナが落ちると、その日どこか近所の食卓が賑わったようです。
もっと近い国の事例もあります。聞いたところによると、サハリンではアオサギが食用としてマーケットに並んでいるそうです。食糧難からなのか昔からの慣習なのか、そこのところは知りません。ただ言えることは、春のアオサギの渡りで宗谷海峡を越えるか越えないかが、一部のアオサギたちにとって決定的な運命の差になるということです。
2001/07/26(Thu) 22:27 佐原 アオサギのはなし
戦時中、食糧難の時代には鷺の卵をとって食べた、というような話は聞いたことがありますが、そういう特別な時代でなくとも、過去アオサギはかなり食べられていたのではないでしょうか。17世紀末の「本朝食鑑」(人見必大)には「味は最美で、白鷺よりも勝れている」とあります。17世紀と言えば、盛んに鷹狩が行われた時代でもあり、東北各地の鷹狩の記録には、獲物としてアオサギが時折でてきます。(オオタカを使ったのでしょうね。)しかし、それをどう料理したかは知りません。
2001/08/03(Fri) 16:32 まつ@管理人 王様の食卓
以前、何かの本で、昔のヨーロッパでアオサギは王様の食事だったというのを読んだことがあります。食べれはしても美味しいとはちょっと想像できないのですが。それにしても佐原さんのおっしゃるように「サギを食べる」ことはごく近年まで普通のことだったに違いありません。北海道では白鳥なんかも戦時中は食べられていたようですし。考えてみると、サギのコロニーを見て大切に守っていかなくてはなどとおせっかいなことを言い始めたのは人類史上ごくごく最近のこと(しかも一部の国)で、それまではコロニーは貴重な食料供給源として見られることが多かったはずです。そう考えると、ヒトによる捕食はコロニーの分布にも大きく影響したことでしょう。
Kushlan & Hafner 著の「Heron Conservation」にはこんなことが書いてありました。香港の近くの村にゴイサギなど3種の混合コロニーがあって、村人は外部の業者にそこのヒナを捕る権利を与え、その報酬として年間2万5千ドルを受け取っているということです。ここの場合はコロニーがダメにならない程度に捕獲を抑えることで、村の経済に貢献し、またそれまで以上にコロニーが保護されることになったという話でした。