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コロニーの内部

コロニーの内部

2002/11/22(Fri) 22:12      まつ@管理人      コロニー探訪

落葉樹の多い北海道は、この時期になると木々はほとんど丸裸になります。アオサギのコロニーも同じで、お椀型の巣が木の枝にいくつもくっつけられた、いわばコロニーの骨組みだけになってしまいます。鳥はとうの昔に去ってしまいました。けれども、コロニーそのものを見たいと思ったら、鳥に迷惑をかけずにうろつくことのできる今の時期こそチャンスです。寒さを我慢してコロニーに入れば思わぬ発見があるかもしれません。

遠くからは同じように見える巣でも、コロニーに入って下から見ると大きさも形も様々です。やっと1羽が乗れる程度のささやかな巣もあれば、支えている木が心配になるほどの1m近い巨大な巣もあります。芸術的なほどまん丸につくられた巣もあれば、小枝があっちこっちに飛び跳ねたようなのや、三角の形をしたものもあります。巣作りの腕前はサギによって個体差があるのでしょうし、たぶん若いうちはあまり上手く造れないのでしょう。もちろん、たくさんの巣があっても全部が使われていたとは限りません。古い巣が使われないまま残っていることもあれば、造りかけて途中でやめてしまう場合もあるからです。大きな巣は何年にもわたって繰り返し使われた巣です。古巣を修繕し巣材を積み足すことによりどんどん巨大化するのです。

今年、北海道は珍しく台風に直撃され、多くの森林被害が出ました。森も山も、外からは何でもないように見えても、中に入ると、折れた跡のまだ生々しい倒木をあちこちに見ることができます。根元から倒れている木には、サギの巣がまだついたままになっていることも珍しくありません。そんな巣を観察すると、遠目には分からなかったことが見えてきます。先日見た巣は、大部分は比較的しっかりした枝が組み合わされたものでしたが、巣の中央部にはワラくずのようなものが敷き詰められて立派な産座ができていました。アオサギが巣を作るのは春先なので、おそらく雪解けの後に出てきた稲科草本の枯れ茎などを使っているのだと思います。けれども産座の作り方に決まったものはないようです。別のコロニーでは大きな枝で作られた巣のなかに、細くて短い小枝ばかりを寄せ集めた産座を見たことがあります。アオサギはそれぞれの地域の事情に合わせて巣材を選んでいるのでしょう。海外では巣材として他の鳥(ペリカンなど)の骨を使うこともあるくらいですからね。

ところで、コロニーで見られるのは巣ばかりではありません。草が枯れてすっきりした林床に目を凝らせば思いがけないものが見つかります。比較的よく目に付くのは卵のかけらです。アオサギの卵はやや緑がかった薄い水色で、鶏の卵よりは一回り小さめです。まるごと落ちていることは普通はないですが、それでも半分くらい割れずに残っている場合は多いようです。そして、卵の殻とともによく見られるのがヒナの死体です。この時期になればすっかり白骨化して生々しさはないのですが、コロニーによっては、わざわざ見つけて歩く必要もないほど多くの骨がそこらじゅうに散らばっています。そういう光景を見ると、賑やかで生命に溢れた夏のコロニーというのは、じつは巣の高さより上の部分だけで、そのすぐ下はアオサギにとって完全な死の世界なのだということを思い知らされます。

コロニーの下にはもう少し見つけにくいものもあります。たとえばアオサギの餌となった魚の残骸。親が運んできた餌がヒナの口に入らずそのまま巣の下へ落下したものです。この時期になると骨しか残っていませんが、アオサギが何を食べていたのか伺い知ることのできる貴重な資料です。ところで、落ちている餌は魚だけとは限りません。あるコロニーでは、4、5cmもあるカニの爪が落ちていたことがありました。そのコロニーは海から30km以上も離れていたのですが、そのくらいの距離は日常的に飛んでいるということでしょうか。

コロニーでの落とし物といえば、これまで私が見つけたものの中で最も変わったものはルアーです。黄色、オレンジ、黒の色彩が鮮やかな10cmくらいのルアーで、針と少々の糸がついています。人が森の中でわざわざルアーを落とすこともないでしょうから、サギがどこからか持ってきたのは間違いありません。問題はどうやってそれを手に入れたかです。水の底に沈んでいたルアーを餌と間違えたのでしょうか? それとも、アオサギが捕らえたのが、たまたまルアーを引きちぎって泳いでいた魚だったのでしょうか? もしかすると、釣り人が動かしているルアーを襲ったのかもしれませんよ。

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