アオサギを議論するページ

アオサギの子育て

アオサギの子育て

2012/02/14(Tue) 16:24      エゾミユビゲラ      アオサギの孵化

永らくご無沙汰いたしました。暖かい地方ではそろそろ繁殖シーズンが始まりますね。北海道はもう少し先ですが。

孵化の写真を何回かに分けて送ってみます。

一番手前の卵に穴が開き始めました。卵に小さな穴が開いてから数時間かかってやっと雛がでてきます。親は殻を破るのを手伝わないので、雛は長時間必死で頑張っています。(1枚目)

小さな穴が何時間もかかって、広がって行きます。親のお腹の下で進んでいるので、親が立ち上がったときに進行状況が観察されます。(2枚目)

やっと雛が出てきます。卵は1日おきに産まれるので、雛の誕生も1日おきです。(3枚目)

鳥が孵化するときは、雛が卵の殻を割って出て来る訳ですが、その時、雛の上の嘴の先端にほんの小さな突起が見られます。これを卵歯(らんし)と呼びますが、これは孵化後間もなく無くなってしまいます。間近で見てもあるような無いような・・・。(4枚目)


2012/02/15(Wed) 21:22      まつ@管理人      Re: アオサギの孵化

これは特別貴重な画像ですね。アオサギのヒナの孵化に立ち会える幸運な人はおそらく世界に何人もいないでしょう。いつか私も見てみたいものです。

ところで、最初の写真に小さなヒナが1羽いて、2枚目、3枚目ではいなくなってるのでどうしたのかなと思ったのですが…。これたぶん別の巣ですね。それにしても、2枚目の写真など、卵をずいぶん丁寧に割っていくんだなと感心しました。あんな小さな中に閉じ込められていて、外に出たときは、ヒナは思いっきり伸びをしたい気分でしょうね。

それから、ひとつ気付いた点を。アオサギが産卵するのは隔日ですが、ヒナの孵化のほうは必ずしも隔日とはいかないようです。卵の中での成長に個体差があるというのもあるのでしょうけど、それよりも、1卵目を産んでもすぐには温めないことが理由のようです。1卵目と2卵目のヒナは、産卵のタイミングから予想されるほどには孵化の時期に差がない、というのが教科書的というか一般的な傾向です。ただ、これは環境によって変わるものかもしれませんね。北海道の場合は、産卵時期はまだ氷点下になりますし、発生の進んでない卵を温めずに放っておくと中で凍ってしまいそうです。この辺の事情について地域差を調べてみると、案外、面白い発見があるかもしれませんね。

2010/07/27(Tue) 21:55      エゾミユビゲラ      無題

「降り止まぬオタマジャクシ論争」が取り上げられておりましたが、私もサギ類に間違いないと思っております。オタマジャクシ100匹程度のボリュームはアオサギにとってヘノ河童でしょう。
雛に与える餌は団子状の物もありますが、原型のままの物もありで、オタマジャクシの形のまま吐き出されても全く不思議ではありませんね。
給餌中の写真を添付しておきます。


2010/07/28(Wed) 19:58      まつ@管理人      Re: 無題

貴重な写真をありがとうございました。巣での給餌シーン、これは一見ありそうで、探すと意外に無い写真かもしれませんね。親がくわえているのはウグイでしょうか。ただ、この餌はヒナたちにはちょっと大きすぎるような気がしますね。見た感じではヒナより餌のほうが重量がありそうですし。写真の状況は、いったん吐き戻された餌を親が再び飲み込んでいるところと想像しました。如何でしょう? ヒナも最初のうちはがんばって飲み込もうとしてみたけれど、どうにも手に余り、仕方がないので親がもう一度取り上げて飲み込もうとしている、そういう場面ではないかと。ヒナも諦めたのか、この餌にはやや興味を失っている感じですね。


2010/07/28(Wed) 21:44      エゾミユビゲラ      Re: 無題

仰せの通り、このヒナには少々大きすぎる餌のようです。記憶によればこのシーンは吐き出したところで、多分この後雛が食べきれず再び親が飲み込んだものです。
ヒナが大きくなると、かなり素早く争って食べるのでなかなか餌を確認できませんね。餌がはっきり確認できる写真はほんの僅かしか撮れません。


2010/07/30(Fri) 06:09      まつ@管理人      Re: 無題

ヒナがこのぐらいの大きさであれば、親鳥が餌を吐き戻すときはもっと巣に頭を突っ込んでいるかなと思ったのですが…。彼らの行動もいろいろパターンがあって難しいですね。

2010/06/03(Thu) 20:41      まつ@管理人      四兄弟の運命

皆さんのところのアオサギのヒナはもう大きくなったでしょうか? 2月頃から卵を温めているところだと、すでに巣立ちも終えているのではないかと思いますが、いかがでしょう?

ここ北海道のヒナたちは巣立ちにはまだほど遠く、親鳥が付きっきりという巣もまだけっこうあります。親鳥が巣を離れはじめるのは、ヒナの誕生後だいたい3週間ほど経ってから。写真の兄弟は大きいヒナでまだ2週半ぐらいですから親鳥もまだしっかり付き添っています。写真の左上に見えているのが親鳥の胸の飾羽ですね。

ところで、この4羽兄弟(1羽は手前のヒナの陰になっています)、ご覧のようにずいぶん大きさが違います。一般にアオサギは1日置きに卵を産むので、4卵の場合は最初の卵と最後の卵では1週間ほどの開きがあります。もっとも、親鳥は1卵目を産んだ後すぐに温めはじめるわけではないので、孵化する時期のズレは多少縮まります。けれども、成長の早いヒナのこと、わずか数日誕生日が違うだけで体格に歴然とした差ができてしまいます。

このぐらいの大きさの4羽兄弟だと、大きなヒナが1羽と、若干小さめのヒナが2羽、そして格段に小さなヒナが1羽という構成が多いようです。大きなヒナが 2羽でやや小さめのヒナが1羽の場合もあります。でも、やはり最後の1羽はぐんと小さくなります。そして、こうなると小さな1羽は生きることがとても難し くなるのです。大きなヒナたちは大きな口と大きな体でますます多くの餌を食べ、小さなヒナはその残りを細々食べるしかありません。それでも餌が十分にある うちはまだ良いのですが、少しでも餌が不足しはじめると大きなヒナは小さなヒナを執拗に虐待して餌を独り占めしてしまいます。こうなると小さなヒナが生き 延びる余地はありません。残念なことに虐待されているヒナを親が助けることはありません。残酷な言い方をすれば、4羽目のヒナは親鳥にとって予備のような ものなのです。これは4羽兄弟に限ったことではなく、5羽の場合も3羽の場合も一番小さなヒナから順に犠牲になっていきます。いずれにしても早く生まれる ことが決定的に優位な世界なのです。 もちろん、このような悲劇はいつも起こるわけではなく、最初のサイズが違ってもだんだん追いつき、4羽、5羽と兄弟全員が元気に育つこともあります。写真 のちょうどこのぐらいの大きさが一番危険なとき。もう一週間ぐらい我慢すれば4羽目が生き延びる可能性はぐんと上がると思います。なんとか親鳥にがんばっ てもらいたいものです。

もちろん、悲劇がいつも起こるわけではありません。最初のサイズが違ってもだんだん追いつき、4羽、5羽と兄弟全員が元気に育つこともあります。写真のちょうどこのぐらいの大きさが一番危険なとき、もう一週間ぐらい我慢すれば4羽目が生き延びる可能性はぐんと上がると思います。なんとか親鳥にがんばってもらいたいものです。

2008/06/29(Sun) 17:04      中条正英      ヒナを食べたアオサギ

アオサギがヒナを食べたと読みました。参考になるかわかりませんがイヌワシも死んだダウンのヒナをひと呑みに食べてしまいました。オオタカはヒナ同士で一番小さなヒナを殺し食べてました。


2008/06/29(Sun) 22:09      まつ@管理人      Re: ヒナを食べたアオサギ

アオサギの親が死んだヒナを食べたという事例、お読みになったのはたぶんここのページの2005年6月15日にある記事だと思います。これは私もびっくりしました。文字を読んだだけでそうなのですから、現場を見られたエゾミユビゲラさんの衝撃はさぞかし大きかっただろうと思います。

中条さんが紹介されたイヌワシの例はアオサギの場合と同じ現象のようですね。ただ、アオサギの場合はそれが固定された行動なのか、あるいはその時たまたまそうだっただけなのかは分かりません。親が死んだヒナを巣から落としているのを以前どこかで見たような気もしますし。

オオタカの兄弟殺しとそれに続く状況、これはアオサギでもあります。ただし、兄弟殺しという部分だけで、そのあと死んだヒナを食べるという状況は見たことがありません。たぶん、同じ巣のヒナ同士で共食いをするということは無いのだと思います。幸か不幸かアオサギは猛禽のようにちぎって食べることができませんから。同じくらいの大きさのヒナは食べたくても食べれないのでしょう。

それにしても、自然の摂理とはいえ、この手の話は書いていてあまり気持ちのいいものではないですね。


2008/07/03(Thu) 19:59      エゾミユビゲラ      Re: ヒナを食べたアオサギ

アオサギが雛を飲み込んだのを目撃したときは驚きましたが、これは滅多にあることではなく、孵化後何日もたたない雛が死んだ場合に限られると思います。

私が観察した例は、前日から暴風雨に見舞われ、おそらく雛の体温が奪われ死んだものと思われます。
雛を意図的に食べたというより、幼い雛の食べ切れなかった餌を再度飲み込む過程で死んだ雛も飲み込んだという感じでした。

イヌワシの場合は恒常的に強い方の雛が弱い雛を殺し、一羽だけを育てるようですが、オオタカの場合は餌が潤沢であれば雛同士が殺し合う事はありません。少々古い記録ですが、昭和52年8月15日発行の月間「アニマ」(平凡社刊)に「オオタカの育雛」で掲載いたしましたが、その時の観察では4羽の雛が無事巣立ちました。

2008/06/29(Sun) 00:31      まつ@管理人      無題

コロニーで巣をひとつひとつ見ていくと、ヒナの数にずいぶんばらつきがあるのに気付かされます。北海道の場合だと多いのは2羽か3羽。ひとりっ子というのも珍しくはありません。逆に、5羽育てているところもあったりします。アオサギの場合、親が餌を十分に獲れなくてヒナが途中で死んでしまうこともけっこうありますから、たとえ生まれるのが5羽であっても巣立ちまで5羽生き残るというのはかなり難しいことのようです。巣立ちビナの数は、産んだ卵の個数ではなく親の餌採りの力量で決まると言っても過言ではないでしょう。単純に考えて、5羽のヒナを育てるためには1羽を育てるのにくらべ5倍も多く餌を獲り、コロニーと餌場の間を5倍も多く往復しないといけないわけですから。

それがどんなにしんどいものかはアオサギに聞いてみなければわかりませんが、ヒナのエサに対する貪欲さを目の当たりにすると、親の大変さも少し分かるような気がします。

2006/06/12(Mon) 21:50      まつ@管理人      兄弟間の争い

私がよく訪れる札幌近郊のコロニー、今年の子育ては例年以上に上手くいっているなと喜んでいたのですが、ここのところ雨がちだったせいか状況は必ずしも思わしくないようです。水中の餌を獲るアオサギにとって、雨は餌を獲りづらくさせるのでしょう。餌不足の影響はヒナたちの行動にすぐ現れます。餌を巡る兄弟喧嘩が頻発するようになるのです。

昨日はヒナ同士の突っつきあいがあちこちで起きていたようです。木の葉が茂ってきたので、喧嘩があっても声だけで姿は見えないことが多いのですが、昨日は2つの巣でその一部始終を目撃することができました。

最初に見たのはヒナが3羽いる巣。ヒナはいずれも4週目くらいでした。4週目のヒナは大きさこそ成鳥にはかないませんが、姿形は親鳥にかなり近くなっています。ヒナを見ているとちょうど親鳥が帰ってきました。このとき巣の隣の枝にもう1羽、巣にいる3羽と同じくらいの大きさのヒナがいたのですが、親鳥が餌を吐き戻した直後に巣に潜り込みました。結局、この1羽を合わせた4羽で餌の奪い合いが始まったわけです。なお、このヒナが巣にいた3羽と兄弟なのかどうかは分かりません。4週目ともなるとヒナは巣の近くの枝に移動するようになるので、親が戻ったときに必ずしも巣にいない場合もあるからです。なので、もし余所から来たヒナであれば、このケースは兄弟喧嘩と言えないかもしれません。

さて、この4羽のヒナですが、餌を食べ始める間もなく、そのうちの2羽がキャーキャー鳴きながらもつれ合っているのが見えました。よく見ると、くちばしで大きな餌を引っ張り合っています。結局、片方のヒナがその大きな魚を丸ごと飲み込んで餌の争奪戦は一段落しました。しかし、その直後でした。おそらく餌を奪われたほうのヒナだと思いますが、突如1羽のヒナを突っつきはじめたのです。こうした争いは、兄弟の多い巣ではよく起こります。餌が十分に与えられていれば問題ないのですが、いったん餌不足になると、それまで仲が良かった兄弟だろうとお構いなしで、まさに骨肉の争いになります。3週目くらいのヒナでも激しく争うことはありますが、4週目のヒナともなると体が大きいだけにいっそう壮絶な闘いになります。それでも双方が向かい合って戦っているうちはまだ見ていられます。けれども、いったん両者の間で優劣が決まると、劣勢に立たされたほうは一方的に攻められ、相手に背を向けるとさらに容赦の無い徹底的な攻撃を受けることになります。こうなると悲惨なこと極まりありません。

ところで、このような突っつき攻撃は小さなヒナ1羽に対して行われるのが普通で、襲われたヒナがぐったりするか巣の外へ追いやられると、残りのヒナの間ではそれ以上の争いが起こることはまずありません。ところが、どうしたことか今回の場合は違いました。1羽を巣から追い出したあと、残りの2羽も次々と襲い、3羽とも巣の外に追い出してしまったのです。ヒナたちはまだ飛べませんから、巣から50センチから1メートルほど離れた所まで枝伝いに逃げていきました。巣の中には追い出した当人が1羽で突っ立っています。

次に親鳥が帰ってくるまで私はそこにいることができませんでした。けれども、その時ヒナたちがどのような行動をとるかはだいたい想像できます。巣にいる1羽は自分ひとりで餌を独占しようとするでしょう。親鳥が餌を吐き戻すまでは、周りで待機しているヒナを威嚇し、巣に近づかないようにするはずです。しかし、追い出されたヒナたちも食べていかなければ死んでしまいます。彼らが巣に戻るのは親鳥が餌を吐き戻した瞬間、巣にいる1羽が餌に気を取られる一瞬です。よほど体にダメージを受けていない限り、ヒナは必ず戻ってきます。そして餌を食べ終えるやいなや、ふたたび兄弟喧嘩、あるいは見るに耐えない一方的な虐待が始まるのです。餌が十分に行き渡らない限り同じことが繰り返されます。それでも、いずれは優位なヒナも餌に満足し、他のヒナを攻撃することもなくなるでしょう。しかし、その時まで弱いヒナが持ちこたえられるかどうか…。そうとう厳しい気がします。

長くなったので、もう一つの巣の話はまた明日にでも書きます。


2006/06/13(Tue) 19:53      まつ@管理人      Re: 兄弟間の争い

もうひとつの巣には3羽のヒナがいました。こちらは昨日のヒナより少し大きめで、しっかりサギの姿になっています(写真)。このヒナたちが喧嘩を始めた状況は残念ながら分かりません。見はじめたときは既に2羽が突っつき合っていました。このヒナたちはお互いの体格に差がないので一方的な攻撃ではなく、昨日紹介したヒナの苛烈さに比べると攻撃はいくぶんおとなしめでした。とはいえ、あの尖ったくちばしで突き刺したり突き刺されたりするのですから、彼らにしてみれば死ぬか生きるかの瀬戸際の戦いであることには違いありません。

2羽がやっていたのは通常の兄弟喧嘩で、くちばしで組み合ったり突っついたりというものです。はじめは両者互角の戦いだったのですが、やがて、わずかに気迫に勝った1羽がもう1羽をじわじわと巣の縁に追いつめていきました。追いつめられたほうの1羽は、巣から伸びる枝にかろうじて足場を確保しました。幸いなことに、このヒナが逃れた枝は巣よりやや高いところにあったため、劣勢に立たされたヒナも一時的に形勢を挽回できたようです。しかしそれもつかの間、しばらくするとふたたび巣にいるヒナが攻撃を始めました。彼らの攻防はほぼ互角でしたが、やはり枝にいることのハンディは如何ともしがたかったようです。枝でバランスを崩したヒナは、不覚にも脚を滑らせ、なんとか落下は免れたものの、巣の縁にぶら下がるような格好になりました。こうなると容易に這い上がれるものではありません。ヒナはそれでも攀じ登ろうとがんばっていましたが、攻撃側のヒナがこのチャンスを見逃すはずもなく、巣に上がろうとするヒナを追い落とすように突っつきはじめました。このとき、2羽のヒナがどのような攻防をしていたのかは分かりません。が、一瞬の後には、巣にいるヒナもバランスを崩し、巣から落ちかけになりました。ほんの数秒のことだったと思います。2羽は巣の陰でばたばたやっていましたが、やがて1羽が巣に這い上がってきたときには、もう1羽の姿は視界から消えていました。

じつは、今回ここに書いたのは特別な事例ではありません。アオサギのコロニーではごく普通に起こっていることなのです。こうして巣から落下し、二度と巣に戻ることなく飢えて死ぬヒナはかなりの数に上ります。兄弟殺しがヒナの最大の死亡要因だという報告もあるほどです。

この日、わたしは、今回紹介した2つの巣とは別の場所で、枝に引っかかったヒナの死体を2体目撃しました。子育てシーズンが終わった後にコロニーに入ると、林床のあちこちでヒナの死体を見かけます。一見、生が横溢しているかに見えるコロニーですが、それは彼らの世界の一側面でしかないのだと、犠牲になったヒナたちを見るたびに痛感します。

巣立ちまであとわずか。コロニーの下で眠る彼らのためにも、生き残ったヒナたちには無事に巣立ちを迎えてほしいものです。


2006/06/14(Wed) 19:22      エゾミユビゲラ      Re: 兄弟間の争い

野生の厳しさを思い知らされる話ですね。雛が全部育っていては、鼠算的に増えますものね。これまで私の観察して来た巣では、餌には恵まれてきたせいか、命を落すような争いは観察しておりませんが、今年の雨竜川系のコロニーは上幌加内に新しいコロニーが出来たものの、全体的には巣の数が少ないようです。鷹泊コロニーは2巣ほどしか確認できませんし、朱鞠内コロニーは消滅です。添付の写真は、育雛中のシュリエットです。


2006/06/15(Thu) 22:30      まつ@管理人      Re: 兄弟間の争い

アオサギの産む卵は平均して4個くらいだと思いますが、北海道の場合でいうと、巣立ちまで生きていられるのは3羽に満たないようです。したがって、孵化から巣立ちまでのいずれかの時期に1羽程度は死んでいるのだと思います。兄弟喧嘩の際の外傷、巣からの落下、飢え、いろいろあると思いますが、いずれにしても平和で穏やかな幼年時代とはほど遠いということですね。そのうえ、巣立ったってしまえばもう安心、とならないのが辛いところで、コロニーを離れて次のシーズンまで生き延びるのは半数以下。それを思うと、アオサギのヒナにとって兄弟間の争いは、生き延びるための最初の試練に過ぎないということでしょうか。

ところで、雨竜川沿いのコロニーですが、朱鞠内コロニーの消滅もさることながら、鷹泊コロニーの2巣というのも、以前、数十つがいが子育てしていた頃からすれば、もはや風前の灯火という感じですね。内陸部の環境は、アオサギが安定して営巣するには厳しいのかもしれませんね。

2006/06/05(Mon) 19:55      まつ@管理人      自立心向上作戦

今年は子育て期間中の天候が良かったせいか、ここ札幌周辺ではいつもよりヒナの数が多いように思います。天気によってヒナ数が変わるというと、あたかも作物の収穫量が天候に左右されているようで変な感じがしますが、自然界ではむしろ天気の影響を受けないほうが稀なんでしょうね。

さて、そのヒナも羽ばたきの練習をする季節になりました。こうなると巣立ちも間近です。そのヒナについて、「親が巣立ちを促すことがあるのか」という質問を先日メールでいただきましたので、折角なのでここでお答えしたいと思います。

アオサギの親はヒナの巣立ちを促します。どうやって促すかというと、巣立ちが近づくとヒナに餌を与えなくなるのです。ただし、ある日突然に餌を持ってこなくなるというものではなく、段階的に変化します。まず親は、ヒナをじらすことから始めます。ヒナに餌をねだられた親鳥は、くちばしをつかまれないよう首を伸ばして簡単には餌を与えないようになります。この場合、ひとしきりヒナをじらした後、結局は餌を与えるのですが、ヒナの成長とともにこの待ち時間は少しずつ長くなります。長くなると、見ているこちらのほうが一体いつまで待たせるんだと苛々してくるほどです。これは言わば心理的な戦術なのですが、これとは別に親鳥はもっと直接的な方法も用います。餌を運んでくる回数を減らすのです。また、一度に与える量も減らしているようです。さらに、いよいよ巣立ち間近になると、思わせぶりに巣に戻っては来るものの、いい加減ヒナを苛立たせた後で何も与えず去っていく場合もあります。ここまでくると、ヒナも腹をくくらざるを得ないでしょう。

なお、よほどヒナが大きくなった後でも、親が戻って来るなりたちまち餌を吐き戻す場合もあります。必ずしも上に書いたとおりに事が運ぶわけではないようです。この辺は餌の獲れ具合などとの兼ね合いもありますし、親の行動もその時の状況によって変わるということなのでしょう。

餌を見つけてくるだけが親鳥の仕事ではないということですね。ヒナたちの自立心をどう引き出すか、この先しばらく親鳥の力量の見せ所です。

2005/06/15(Wed) 20:28      エゾミユビゲラ      雛が死んだ

それぞれのコロニーでそろそろ巣立ちを迎える季節になりましたが、今年はどんなドラマがあったでしょうか。
宇摩のコロニーは嵐山に比べて20日程遅れているでしょうか。やっと育雛後期に入ったところです。孵化の前後に風雨と低温に見舞われました。そのせいかどうか分かりませんが、孵化後1日位の雛の死亡を初めて観察しました。
ここでエゾミユビゲラの3択問題です。
親は死んだ雛をどうしたでしょうか。
① 雛を食べた。
② 雛を巣の外に落した。
③ 雛をくわえて飛んでいった。
皆さん推理してみて下さい。


2005/06/17(Fri) 23:27      まつ@管理人      Re: 雛が死んだ

②でお願いします。③のくわえて飛んでいくというのは無いと思います。お墓でもあるのなら別ですが。①はちょっと考えられませんね。もしこれが答えだとすればかなり衝撃的です。


2005/06/19(Sun) 20:49      エゾミユビゲラ      雛が死んだの答え

3羽の雛のうち1羽が死に、それを親がくわえました。さあどうする。
なんと飲み込んでしまいました。アオサギの観察を始めて以来最大の衝撃で、全身の毛が逆立つ思いでした。

しかし、落ち着いてその行動を振り返ってみると、考えられる事とも思えます。先ず、雛への給餌方法を見てみると、巣の中へ飲み込んできた餌を吐き戻します。雛がそれを食べますが、生まれて間もない雛は、それを全部食べ切れません。特に大きすぎる餌は残します。雛が餌を食べ終わったとみると、親は残った餌を順々に食べ始めます。そして死んだ雛もつまみあげ飲み込んだという訳です。果たして自分の雛だという認識があるのかどうかはアオサギに聞いてみなければ分かりませんが、かなりあり得る行動パターンの様にも思えます。複数の観察例をしりたいものです。

また大きくなった雛が死んだ場合や、発育中止卵、無精卵の場合はどうなのかと言う疑問もわいてきます。


2005/06/21(Tue) 21:27      まつ@管理人      Re: 雛が死んだ

なんと、飲み込んでしまいましたか。エゾミユビゲラさんの全身の毛が逆立つほどの衝撃、分かる気がします。

アオサギどうしの共食いは私は見たことありませんが全く起こりえないわけではないようです。たとえばロシアのあるコロニーでは、巣立ちしたばかりのヒナが小さなヒナを飲み込んでいます。犠牲になったのは親が留守にしていた巣のヒナで、2羽のヒナが立て続けに飲まれたようです。このコロニーでは、他にも死んだヒナが食べられた場面が2度目撃されていますが、いずれも襲ったのは巣立ち雛ということで、エゾミユビゲラさんが目撃されたように、成鳥によるヒナの捕食、しかもそれが自分の子だったという事例はこれまで報告されてないのではないかと思います。

アオサギの世界で共食いがどのくらいの頻度で起こっているのかは分かりません。しかし、少なくとも一般的な習性ではないと思います。ただ、上述したような例もあり、巣立ち雛に関する限り、深刻な餌不足など特殊な状況下ではそこそこ起こっているのかもしれません。けれども、親が自分のヒナを食べるというのはこれとはやや意味合いが違う気がします。巣立ち雛の場合は常に餓死の危険と隣り合わせなので、身の回りで食べられるものなら機会を逃さず何でも食べるというのは当然といえば当然の行為。これに対して、成鳥の場合は餌の確保の点でかなり余裕があるはずなので、敢えてヒナを食べなければならないほどの積極的な理由は無いと思うのです。そのまま捨てるのはもったいないのでとりあえず食べた、という感じなのでしょうか。一例だけでは本当のことは判断しかねますが、親鳥にとっては、ヒナが死んだ時点で、それが自分の子であるかどうかに関わらず、身の回りの環境の一部分に過ぎなくなるのでしょう。

我々人間から見れば何とも残酷な話ですが、そもそもアオサギの世界に人間の倫理観を持ち込むのが間違っているわけで、共食いであれ何であれ全て含めてアオサギの世界です。人間の価値観からすると身も蓋もない世界かもしれませんが、あらゆる判断が生死に直結する彼らの世界では、利用できるものは何でも利用するという研ぎ澄まされた合理性こそ最大の美徳と言えるのかもしれませんね。

2005/06/12(Sun) 14:36      まつ@管理人      無題

少し前にウラジオストックの近くの島で営巣しているサギのことを書きました。その営巣地の特徴は地上に巣をつくっているという点なのですが、地上で営巣している所には地上性の捕食者はいないものと思っていました。ところがそれは勝手な思い込みで、捕食者がいるのに地上営巣しているところもあるようです。当然、起こるべきことが起こるわけで…。ポーランドのあるコロニーではヒナの実に71%が食べられたそうです。原典に当たっていないので詳しい状況は分かりませんが、毎年こうしたことが起こっているとは考えられず、おそらくそれまでいなかった捕食者が突然現れたのでしょう。それにしても、71%というのはあまりにも高い死亡率です。

ヒナの死亡率でいうと、88%というほとんど壊滅的なものもあります。これは日本海のどこかの島なのですが詳細は分かりません。ロシア人の報告なので、もしかすると前述したウラジオストック近くの島と同じかもしれません。

さて、この驚異的に高い死亡率ですが、じつはこれ、捕食によるものではなく、すべて兄弟殺しによるものなのです。今の時期、アオサギの子育てを観察していると、親の運んできた餌を巡って兄弟間で凄じい争いが見られます。争いというよりは、大きなヒナが小さなヒナを一方的に迫害するのですが、何度見てもショッキングで恐ろしい光景です。

こういった兄弟殺しは鳥の世界では珍しくはなく、たとえば一部の猛禽類やカツオドリ、ペリカンなどでも見られるそうです。ただし、その様式?は様々で、一羽がほぼ必ず殺されるというパターンの固定されたものもありますし、餌が不足したときに弱いものから殺されるというのもあります。サギ科で起こっているのは後者のほうです。

しかよく考えてみるとし、88%が全て兄弟殺しというのは少し変ですね。仮に5羽の兄弟が争って4羽死んだとしても死亡率80%にしかなりませんから。ひとつの巣に5羽以上ヒナがいるということはまずありませんし、どういうことなのでしょう? 最後の2羽になったところで相討ちで両方死んでしまうのでしょうか。いま手元に原典が無いので実際何が起こったのか分からないのですが、調べて詳細が分かればまたここで報告したいと思います。

ところで、逆に言えば餌さえ十分あれば兄弟殺しは全く起きないわけです。なので、コロニーによって、あるいは年によってそれが起きる頻度は全然違ってきます。ある年のあるコロニーでは全てのヒナが仲良く?すくすくと育つこともあり、そのように安穏と巣立ったヒナがいる一方で、わずか12%の生存率をかけて修羅場を生き延びたヒナもいるのです。一見、皆同じように見えるアオサギですが、彼ら個々がもつ背景というのは人のそれと同じく実に様々だということですね。

2005/06/02(Thu) 19:53      エゾミユビゲラ      雛が増えた?!

ある巣を観察していたとき、この巣の雛の数は5羽だった筈がいつの間にか6羽になっていました。猛禽類にも見られることですが、他の木に飛んでいったと思ったら、又戻ってきたりします。たまたま他の巣の雛がこの巣にやって来てしまったのです。さあこの後他の巣からやって来た雛はどうなったと思いますか?皆さん考えてみて下さい。

① 戻ってきた親を見て逃げ出した。
② 仲良く他の雛達と餌を食べた。
③ 親に追い払われた。


2005/06/03(Fri) 23:37      まつ@管理人      Re: 雛が増えた?!

ひとつの巣に6羽もいるとなると、これはもう八又のおろち状態ですね。

さて、問題のほうですが、ヒナは親鳥の運んでくる餌を目当てに他の巣に乱入しているはずなので、少なくとも①「戻ってきた親を見て逃げ出した」ということはないと思います。③「親に追い払われた」というのはいかにもありそうですが、親が自分のヒナと他人のヒナを区別できるかどうか。5羽から1羽増えたことを数の上で認識することもそう簡単とは思えませんし、これは微妙なところですね。ということで、私は②「仲良く他のヒナたちと餌を食べた」が正解だと思います。いかがでしょう? 仲良く、かどうかは分かりませんが。

ヒナが他の巣へ出向いて餌を略奪する行動は比較的普通に見られます。ただ、その際には、親鳥が自分のヒナに給餌する瞬間に巣に分け入り、どさくさに紛れて餌を失敬するというのが普通で、エゾミユビゲラさんが見られたように、親が戻る前から巣に侵入しているような大胆なヒナはあまりいないと思います。それだけに、エゾミユビゲラさんがどのような場面を観察されたのか、結果のご報告が楽しみです。

ところで、この餌泥棒たちには手加減というものが全くありません。ロシアのあるコロニーからの報告ですが、ここでは1羽の親鳥のもとになんと15羽ものヒナが集まってきたそうです。ヒナも生きるのに必死なんでしょうけど、こうなると親鳥も命がけですね。


2005/06/05(Sun) 08:35      まつ@管理人      Re: 雛が増えた?!

最後に書いたロシアの事例の補足です。実はこれ、ウラジオストックに近い島のコロニーなのですが、この島には高木が無いためアオサギたちは地上で営巣しています。ということは、巣と巣の間は全くの地続きで、ヒナは歩けさえすればどこにでも行けるということです。それで15羽が集まるという、樹上の巣であればちょっと考えられない異常事態となったのです。

こうなるとエゾミユビゲラさんが触れられていたように、つがいごとの繁殖時期のずれが大きく効いてきます。早い時期に生まれたヒナは静かな環境の中ですくすくと育ちますが、生まれる時期が遅いと周りじゅう略奪者だらけの過酷な環境に晒されることになります。この点、繁殖時期は早いほうが有利です。一刻も早く繁殖を始めようと、春先のまだ雪深い時期からやってくる親鳥の気持ちも分かる気がします。


2005/06/07(Tue) 18:41      エゾミユビゲラ      雛が増えた?!の答え

答えは③の親に追い払われたでした。
人間の目から見るとまるで見分けがつかないのですが、親はお見通しのようでした。集団でいる雛の中から、帰ってきた親が自分の雛を探し出すペンギンの例を見ても、割と個体識別は得意なのでしょうか。
しかし管理人さんの言われるように、鳥にとって数の認識は苦手ではないでしょうか。かつてアリスイの巣立ちを観察していたところ、3羽の雛のうち2羽が巣立ち残りの1羽がまだ巣に残っておりましたが、親は巣立った雛ばかりに餌をやり、残った雛はとうとう死んでしまいました。種類が違うのでいっしょくたんにはできませんが、行動面から進化を考えるのも面白いと思います。


2005/06/07(Tue) 22:29      まつ@管理人      Re: 雛が増えた?!の答え

③でしたか。アオサギの能力を過小評価してしまったようで彼らに申し訳ないです。たしかに自分のヒナと他人のヒナを見分ける能力は必要ですよね。それができなければ全てが無秩序になりますから。
彼らの行動をもっと注意深く観察しないとだめですね。

2005/05/18(Wed) 12:29      エゾミユビゲラ      繁殖開始年齢は

コロニーへやって来る個体を見ていると、若い個体は遅れてやって来るような気がします。そして繁殖にかかわらない個体が居るようでもあります。一体何時から繁殖可能なのかという疑問が沸いてくるのですが、昨年生まれの個体と見られる番の産卵(2個)育雛を観察しました。白樺の横枝にただ乗っただけのような、小さめの巣で無事に巣立つ事を祈っておりましたが、5月の強風で巣が落ちてしまい巣立ちには至りませんでした。


2005/05/19(Thu) 08:20      まつ@管理人      Re: 繁殖開始年齢は

アオサギはふつう2年目から繁殖を始めるようです。1年目からというのは滅多にいません。ただ1年目でも生殖能力はあるので、卵を産んでヒナを孵すことはできます。けれども、ヒナを育てるとなると経験の乏しい1年目の個体にはかなり難しいようで、遅かれ早かれ失敗するようです。たかだか一年しかこの世にいないわけですから、成鳥に比べれば採餌能力も劣っていて、自分が食べる分は何とかなってもヒナに与えるほどには十分な餌が獲れないのではないかと思います。それに、育雛の細かな手順を正しくこなす能力もまだ備わっていないのかもしれません。そうしたものは自分の経験や他の個体の行動を観察することによって学習していくものだと思います。1年目の個体は繁殖していなくてもコロニーにやってきて、他人の巣を物珍しそうにのぞき込んでいることがよくあります。それ自体は好奇心でやっていることかもしれませんが、そのことによって繁殖に必要なことも学習しているのかもしれません。

1年目から繁殖しているのは私も数えるほどしか見たことありません。なので、確かなことは言えませんが、つがいになるパターンとしては雄が成鳥で雌が1年目の若い個体という場合が多いようです。逆のパターンは記憶に無いです。写真のように2羽とも幼鳥というのは相当珍しいのではないでしょうか。

それから、若い個体が遅れてやってくるというのは本当だと思います。遅くコロニーに到着するとコロニーの中心部はすでに埋まっているので、たいていコロニーの端っこのほうに巣をつくることになります。そして端っこに巣をつくった若い個体(必ずしも若い個体ばかりとは言えませんが)はよく失敗します。コロニーの中心と端とでは中心のほうが繁殖成績が良いという報告がいくつもありますが、それはコロニーの端が中心に比べて繁殖するのに不都合なことが多いからというのではなく、もともと繁殖能力の劣る個体が端のほうで営巣するからそういうい結果になるのだと思います。

2004/06/17(Thu) 22:57      まつ@管理人      Re: アオサギの平衝感覚

アオサギのヒナは自分の巣からよく落ちます。小さいうちはそんなに動き回らないので大丈夫ですが、早ければ3週目くらいで落ちることがあります。ただ、どの時期に落ちるにせよ自分の巣に戻らない限りまともな餌にはありつけないので、いったん巣から落ちるとほぼ100%助かりません。
繁殖が終わりサギがいなくなったあと森に入ると、コロニーの下には相当な数のヒナの死体が見つかります。繁殖期のコロニーは、林の上こそ活力に満ち溢れていますが、そのすぐ下はサギにとっては全く無慈悲な世界です。

なぜヒナが落ちるのかはよく分かりません。枝にとまって危なっかしそうに見えても、いちおう鳥ですから足を滑らせて落ちることはまず無いと思います。ただ、枝の入り組んだところで暮らしているので、枝が羽などに変なふうに絡まり、もがいているうちに落ちるという可能性はあります。あるいは強風で巣の一部ごと吹き飛ばされることもあるかもしれません。
けれども私の見たところでは、そうした単純な理由よりも餌を巡る兄弟間の争いで犠牲になる場合のほうが多いのではないかと思います。兄弟喧嘩というより大きなヒナによる小さなヒナへの一方的ないじめです。親が餌を運んできた際、大きなヒナが小さなヒナに餌を食べさせまいとして執拗に突っつくので、場合によっては巣から突き落とされるのです。

2004/06/01(Tue) 22:41      まつ@管理人      ヒナの生き残り戦術

ヒナがどんどん成長して大きくなる時期には、彼らにとって体の大きさが全てで、大きなヒナほど多くの餌をもらえます。その上、大きなヒナが小さなヒナを虐待するので、小さなヒナが餌にありつくのはますます難しくなります。とはいえ、小さなヒナも食べなくては死ぬばかりですから、あの手この手で餌にありつこうとします。たとえば、親が巣に戻ってきたとき、兄弟に突付かれた小さなヒナは巣の縁に追いやられ、もう参ったというように巣の外を向いてしまいます。ですが、これは見せかけであることも多く、親が餌を吐き戻した瞬間に振り向いて餌を食べるのです。彼らなりの生きる知恵なんですね。

2004/05/13(Thu) 23:13      まつ@管理人      雨の日は・・・

アオサギたちは、餌場にいるときも巣にいるときも百パーセント空が天井です。雨が降ってもカンカンに照っても逃げるところがありません。そのくらいで不平を言っていたら、とても野生では生きていけないのですが、でも、ヒナの場合は・・・。

雨量が多いとヒナの死亡率が高くなるという報告があります。自分で体温調節ができない小さなヒナは、濡れるとたちまち体温が奪われるのでしょう。それに雨が降ると、親が水辺でエサを探すのも難しくなります。アオサギは視覚を頼りに採餌を行うので、雨で水面に波紋ができると水の中が見えにくくなるのです。雨に濡れて消耗するうえ、親はなかなかエサを持ってきてくれない、となれば、ヒナにとっては二重のダメージです。また、大きなヒナの場合でも、羽が生えそろっていなければ、濡れるのはやはりこたえるはず。エサ不足という点では、体が大きいぶん余計に深刻かもしれません。

一日雨の降り続いた今日、天井も壁もある部屋の中でそんなことを考えました。

2004/04/29(Thu) 22:02      まつ@管理人      ヒナの成長について

アオサギのヒナは生まれて10日くらいは、まだずんぐりむっくりで、成長もゆっくりです。この頃のヒナはエサの魚を丸ごとは食べられないので、親が半ば消化したものを口移しで与えています。うぶ毛に代わって羽が生え始めるのが2週目に入ってから。そして2週間後には自分の足で立ちあがれるようになり、未消化のエサも食べ始めます。ふ化後10日から25日目頃までは、成長の著しい時期。文字通り日に日に大きくなりサギらしい姿になっていきます。

2003/06/22(Sun) 20:39      まつ@管理人      早いほど良い

札幌近郊のコロニーでは、飛べるようになった幼鳥もぼつぼつ現れはじめ、子育ても最終盤を迎えています。この時期の幼鳥は、コロニーから遠くへ離れることはないものの、コロニー内であればどこへでも動き回れます。そんな時期、頻繁に目にするのが他の巣の幼鳥による餌の略奪行為です。親が自分のヒナたちに餌を与えようとすると、別の巣にいる腹を空かせた幼鳥たちが餌を横取りしようと割り込んでくるのです。当然、親はそんな横暴を許すはずもなく、近づいてくる幼鳥には威嚇したり攻撃したり、何とかして餌をとられまいとします。しかし、いかんせんコロニーですから、追っ払っても追っ払っても次々に幼鳥が来てしまいます。結局、いつかは自分のヒナに餌を与えることになるのですが、どん欲な幼鳥たちにとっては、親が餌を吐き戻すその一瞬が狙い目なのです。親がヒナにくちばしを掴まれるようにして餌を吐き戻している時は、自分のヒナたちによる餌争奪戦だけでもう十分に混乱した状態なのですが、そこへ別の巣の幼鳥たちがあっちからもこっちからもワラワラと乱入してくるのです。そうなるともうぐちゃぐちゃ。親も何が何だかポカンとしてなす術がありません。

コロニーであるが故の弊害とはいえ、自分の子のために苦心して捕ってきた餌を他人に持ち逃げされる親にしてみれば、なんともやりきれない話です。こんな惨めな事態を防ぐ最良の方法は、早い時期に子育てを始めて他の巣のヒナたちがまだ飛べないうちに子育てを終えることです。まあ、そこまで段違いに繁殖の開始を早めることはできないにしても、他のつがいより少しでも早く始めれれば、それだけ被害は少なくてすみます。その上、いち早く成長したヒナたちは、他の巣で略奪する機会も多く得られるというわけです。逆に、遅く繁殖を始めた場合には、よその幼鳥たちに餌を奪われる可能性が高くなる上、ヒナたちがようやく成長した頃には、他の巣の餌を横取りしようにも、ほとんどのヒナは巣立ったあとで、もはや襲うべき巣もないといった有り様です。

なんとも、弱肉強食そのままの世界ですね。アオサギは経験豊富なつがいほど早くから繁殖を始めると言われていますが、この辺の事情も十分に考慮してのことかもしれません。

2003/05/24(Sat) 16:33      まつ@管理人      子育て

アオサギに限らず動物の子育てというのは、何によらず見ていて興味が尽きないものですが、考えてみると、身近なところで人目も避けず堂々と子育てしている動物というのはペットや家畜でもない限りそうそういないような気がします。その点アオサギは例外といえるかもしれません。

さて、ここ北海道のアオサギは、いま子育ての真っ最中です。地域によって時期は多少ずれますが、札幌近郊だと3分の2以上の巣にはすでにヒナがいるようです。小さなヒナはまだずんぐりむっくりで、時折巣の上に頭が見える程度ですが、大きなヒナだとかなり首も長くなって巣の縁で羽ばたきの練習をしていたりします。

ところで、ふ化して何日目のヒナかというのは見かけだけではなかなか判断しきれません。一般的にはふ化後2週間で羽が生え始め、4週間で生え揃うと言われていますが、近くからじっくり見ないことには分かるものではありません。また、大きさといっても連続的なものですからそれだけで判断するのは困難です。やはり一番分かりやすいのはヒナや親の行動ではないでしょうか。ヒナの成長にしたがって変わっていく彼らの行動を見ていると、ヒナのおおよその齢を見積もることができます。

ヒナが生まれて最初のうちは親は四六時中巣に座ったままです。この頃はヒナも小さくてきちんと立てないので、たまに親が立ち上がったとしてもなかなかヒナを見ることはできません。ただ、ヒナの姿が見えなくてもヒナが生まれているサインを見つけることはできます。たとえば、親が長く巣に首を突っ込んでいるとき。これはヒナへ給餌するためですが、場合によっては、この後でヒナの食べきれなかった餌を親が巣からつまみ上げて再び飲み込むシーンが見られます。それから、親鳥が巣から取り上げた何かを首を振って辺りへまき散らしているとき。これは卵の殻をばらまいているのです。もしそういうシーンが見られたなら、その巣ではヒナが生まれたばかりなのかもしれません。

座りっぱなしの状態がだいたい10日間続いた後、親は次第に多くの時間を巣の縁に立って過ごすようになります。そして、ふ化後2週間もするとヒナは自分の脚で立ち、パタパタと小さな羽をはばたかせ始めます。それまで巣に吐き戻された餌をついばんでいたヒナが、親のくちばしから直接餌をもらうようになるのもこの頃です。ヒナは餌をねだって親のくちばしを盛んにつかみますが、最初静かで弱々しいこの動作も日毎に力強くなっていきます。けれどもまだこの段階では、ヒナは自分で体温調節ができないうえ捕食者に襲われる心配もあり、親の保護が欠かせません。そのため、この時期にはどちらか片方の親が必ず巣に留まっています。

ふ化後3~4週間経つと、親の保護が必要でなくなり両親とも巣を離れるようになります。この頃には、ヒナはしっかり立てるようになり、また多くの時間を巣の縁に立って過ごすようになります。また巣を支えている枝を攀じ登り始めるのもこの時期です。さらにふ化後30日を過ぎると、ヒナは自分の巣を離れてコロニーの中をけっこう遠くまで出かけるようになります。けれどもまだ枝伝いに歩いて出歩くのが精いっぱいで、わずかに飛べるようになるのは40日を過ぎてからです。このあとヒナが巣を離れる時間は徐々に長くなりますが、自分で餌が採れるわけではなく、親が帰ってくると餌をもらいに巣に戻る日々が続きます。ようやくヒナが自分で餌を採れるようになるのは生後約10週間も後のことです。

ざっとこんなところですが、最後のほうになると餌条件やヒナの数、それに親の力量などによって、ヒナの成長にはかなりズレが生じるようです。

2003/05/07(Wed) 19:37      まつ@管理人      無題

気が付いてみると暦の上ではすでに夏なんですね。四国や九州あたりのアオサギのヒナは、この時期どこまで成長しているのでしょう。もう巣立っているのでしょうか?
ここ札幌はというと、コロニー内のヒナの声が徐々に大きくなりつつあります。早く生まれたヒナだと現在2週目くらいのようです。首が少し長くなってはいますが、まだまだすんぐりした体型です。このくらいだと、親が餌を運んできても兄弟で奪い合うこともなく、こちらも安心して見ていられます。もっとも、そんな長閑な時期は本当に束の間なんですけどね。あと1、2週間もすれば…。

アオサギが子育てするこの時期になると、ヒナが何羽いるかついつい数えてしまいます。私の経験では3羽という巣が最も多いように思います。ただ、これは場所によってかなり異なるものらしく、平均して2羽前後しか巣立たせられないコロニーもあれば、4羽どころか5羽巣立つのも珍しくないコロニーもあります。ちなみに、6羽というのは未だかつて確認したことがありません。おそらく報告例もないはずです。皆さんの観察ではどうでしょうか。

2003/04/30(Wed) 18:50      まつ@管理人      無題

ヒナが小さいうちは、もし生まれていたとしても見つけるのは大変です。けれども、よく観察しているとヒナが生まれているサインを見つけることができます。例えば、親がヒナに餌を与える時。ヒナが小さい間は半ば消化された餌を吐き戻して丁寧に与えるので、親が巣にかがみ込んでしばらくじっとしていればヒナが生まれている可能性は高いです。もうひとつは卵の殻をばらまく時。アオサギの親はヒナが生まれると、用のなくなった殻を巣の外へ捨てます。くちばしで拾った殻を首を振って遠くへまき散らすのです。あまり頻繁にはやりませんが、大きくて見やすいコロニーだとヒナの誕生ラッシュの頃には見られるかもしれません。

2003/01/30(Thu) 17:12      まつ@管理人      アオサギの子育て

一般に、アオサギでは雄が巣材を運び、雌が巣をつくると言われています。私もけっこう長く観察していましたが、巣材運びは基本的に雄の仕事でした。ただし雌が巣材を運ぶことも全く無いわけではなく、気が向けば自分でも取りに行くようです。気が向けばというより、雄の持ってくる巣材がどうにも気に入らないといったような具体的な理由があるのかもしれません。いずれにせよ、巣作りにおける役割分担は固定したものではないと思います。どちらがどの作業をするかというのは、雌雄の経験の差や個々のアオサギの性格などによって多分に左右されているのではないでしょうか。

ところで、アオサギの場合、雌雄間の役割分担は抱卵期以降かなり希薄になるようです。彼らは、つがい相手に餌をもって帰るということはありませんから、空腹になれば自分で餌場へ向かわなければなりません。そのため、抱卵も育雛も基本的に交替で行われます。ただし、部分的な取り決め、例えば、夜間はなるべく雌が巣に残る、といったような取り決めは多少あるかもしれません。この辺の事情については、まだまだ不明な部分が多く、今後きちんと個体を識別した上での研究が待たれているところです。

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