アオサギを議論するページ

神々の王

《注意》この記事はエイプリルフール用に書いた完全な作り話です。4月1日に最後まで読まれた皆さん、寛大な心で嘘にお付き合いいただきありがとうございました。

あっという間にもう四月。この春は本州方面の天候がぱっとしなかったせいか、アオサギの渡りもだいぶん遅れているようですね。それでももう四月ですから、まだのんびり構えているサギたちもそろそろ本気になってくる頃でしょう。

さて、話変わって、今回は久々に古代エジプトのべヌウについて書いてみたいと思います。ベヌウは当サイトでも何度も取り上げたことがありますが、アオサギがモチーフになった古代エジプトの聖鳥です。左の写真の赤枠で囲んだ部分が、ヒエログリフで書かれたベヌウという文字。そして、枠の中の右端に描かれた、膝を立てて座っている人の絵によって、ベヌウがただの鳥でなく神であることが示されています。

ところで、この写真で紹介した文章は『死者の書』にあるものですが、大英博物館のエジプト学者であるヴォリス・バッジョが英訳したものを、拙いながら和訳してみました。だいたい以下のようなことが書かれています。

「我は原初の丘より飛びいでしものなり。我はケペラのごとく来たれり。我は植物の如く芽を吹きたり。我は亀の如く甲羅の中に隠れたり。我の名はベヌウ。全ての神々の王なり。」

どうでしょう。ベヌウというのはじつはただの鳥でないどころか、ただの神ですらなく、神々の王、最高神だったのですね。エジプトで有名な神といえば、ラーとかオシリスとかがまず思いつきますけど、そうした神々が擡頭してくる以前はベヌウこそが神々の王だったのです。それもそのはずで、エジプト中王国の初期の頃は、ベヌウはもとよりアオサギが最高度に崇拝されていたことが、死者の書だけでなく様々な文書によって明らかにされています。サギの一声で、人々はおろか、神々までもが皆ひれ伏していたのです。

たとえば、紀元前5世紀にギリシャ、ケファロニア島のアッゲロスが書いたと言われているエジプトの旅行記。その本に、彼がヘリオポリスの神官から聞いた話として次のような文が収められています。

「千五百年前(訳注:今から4000年前)頃までは、人々に最も崇められていた動物はアオサギで、コロニーの近くには必ず立派な祭壇が設けられていたという。(中略)そして、ひとたびアオサギのコロニーが放棄されると、人々はアオサギのためにペルセアの木を組み合わせて壮大なピラミッドをつくったという。」(小松修著『古代エジプト人の動物観』より)

いま考えればとんでもなく滑稽に思えるかもしれませんが、当時の人々にとってはアオサギは自分たちよりはるかに多くの能力をもち、畏敬するのが当たり前の存在だったのでしょう。人間など飛ぶ能力さえ無いのですからね。そんな謙虚だった人間がいつのまにかどうでもいいような仮初めの技術やくだらない思想を身につけ、自分たちだけが他の動物たちとは違う高級な次元にでも住んでいるかのように思い上がってしまった、そのなれの果てが現在の私たちなわけですね。

4000年前に木でつくられたピラミッドは、残念ながら現在ではそのかけらさえ残っていません。乾燥したエジプトの気候とはいえ、材質が木では4000年の歳月はさすがに長すぎました。ただ幸いなことに、カルナック神殿に残された壁画から、私たちはその壮麗な建築の一端を伺い知ることができます。大英博物館のサイトに写真があるので紹介しておきますね。ピラミッドの先端にとまっているのは、もちろんアオサギです。 ⇒ アオサギピラミッドの写真

ひと休み

この時期に吹雪かれるのは真冬に吹雪かれるより寒く感じますね。アオサギはどうなのでしょうか。

数日前から巣作りをはじめた江別のサギたちですが、今日のコロニーはふたたび空っぽ。卵はまだ産んでないので、天気が悪ければ敢えて巣に留まる必要もありません。荒れた日は風の避けられるねぐらに戻ってひと休みです。

写真は今日のねぐらの様子。ここに写っているのが現在までに渡ってきているメンバーのほぼ全てです。ここの繁殖地は最盛期には三百数十羽が営巣しますから、今現在到着しているのは全体の6分の1か7分の1というところ。今いるのは皆、子育て経験豊富なサギたちなのでしょう。ところで、写真には少なくとも47羽が確認できます。皆さん、何羽まで数えられますか? (注意:くれぐれもあまり真剣に数えて悩まないように。言われなければまず分からない隠し絵みたいなのも何羽かいますから)

巣作り開始

江別コロニーのその後。16日は20羽弱だったアオサギが、17日はコロニーに38羽、ねぐらに6羽と一日で倍増しました。17日は適度な南風があったので風に乗ってやって来たのですね。これからも南風が吹くたびにどんどん渡ってきそうです。

コロニーでは、早いところはすでにペアができて巣作りも始まっています。この時期、雪に覆われた地上で巣材を見つけるのは大変です。ただ、今なら誰も使ってない巣が周りにたくさんありますから、使い古しの巣材でよければ簡単に調達できるのです。

ところで、アオサギの巣は雪の重みで落ちてしまうのもあれば、春までしっかり残るのもあります。どのくらいの巣が残るかは、その地域の気象条件や使われる巣材のタイプによって変わるはずでます。比較的、積雪量の多い江別コロニーの場合だと、すっかり無くなるのは全体の2、3割といったところ。残りは多かれ少なかれダメージを受けながらも何とか枝にしがみついています。

さて、春先、早くからコロニーにやってくるサギたちは早いもの順に営巣場所を選んでいきます。多くは残っている巣にまず陣取るようですね。ところが、使われていない空巣が周りにあっても、敢えて何も無いところに一からつくり始めるペアもいます。手間をかけても自分の好きなところに巣をつくりたいのでしょう。手っ取り早いからといってガタの来ている巣を適当にリフォームして、ヒナが生まれた頃にばらばら崩れたのでは後悔してもしきれませんからね。最初から自分でつくったほうが後々安心できるのかもしれません。あるいは、巣があろうが無かろうが、ともかくこの場所が好きなんだということかもしれません。ロケーションは大切です。何も考えずに適当なところにつくったら、あとあと隣近所との関係が面倒なことになりかねませんから。

シーズン到来

とうとう北海道にもアオサギが渡って来たようです。あちこちから初飛来の便りが届きはじめました。春めいてきたかなと思ったら、必ず来ますね。人間の私でも季節の移り目が分かるくらいですから、常時、自然の中で暮らす彼らなら、私たちよりはるかに正確に時を感じられるのでしょう。

写真は江別市にある冬ねぐらで羽を休めるアオサギたち。ついでにオオダイサギも1羽混じってます。氷のすっかり落ちた水辺といい、春の陽の反射の眩しいことといい、もう冬の光景ではないですね。

じつは、札幌近郊では少数が越冬しているため、この時期のアオサギは渡ってきたサギなのかここで冬を越したサギなのか判断しづらいのです。けれども、昨日この冬ねぐらにいたアオサギは20羽。越冬サギの数ではとても説明しきれません。明らかに渡りのサギたちが混じっています。その前日、札幌の平岡コロニーにも初飛来があったようですし、アオサギシーズン、いよいよ開幕です。

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