アオサギを議論するページ

池からサギを追い払う方法

今年もオタマジャクシの降る季節になりましたね。⇒ こちら
今回はサギが犯人だと認めているようです。とんでもない推測をして大騒ぎするのもさすがに疲れたのでしょうか。素直に認められると却って寂しい気もしますが。

さて、それは置いておいて別の話です。先日、当サイトを御覧になった方から釣り池でのアオサギ防除についてメールでご質問をいただきました。じつは養魚場や釣り池でのアオサギの食害に困って当サイトを訪れる方はけっこういらっしゃいます。「アオサギ 被害」とか「アオサギ 防除」とかで検索すると当サイトが一番上に出てくるので、幸か不幸かここに辿り着いてしまうのですね。それだけアオサギの被害対策についてまともに書いているところが無いということなのでしょう。それを思うと、曲がりなりにも有用な情報をまとめなければと思うのですが、いつものことながら思うだけで一向に前に進みません。

そんなことで、今回はちょうど良い機会なので、お答えした内容の一部をここに書き留めておこうと思います。まとまったものでなく、とりあえず思いつくまま書きます。

釣り池での防除が難しいのはネットやテグスといった物理的な防除法が使えないからなのですね。より自然に近い状態のままアオサギを近づけさせないようにするわけですからこれは難題です。以前は、水深を50センチもとれば大丈夫と思っていたのですが、実際はどうやらこんなふうに飛び込むこともあるようで、浅瀬をなくしたからといって必ずしも安全ではありません。ではどうすればよいかということでいろいろ考えてみました。ひとつの案が右の絵で表したものです。やはりここでもアオサギが水に入れないように水際の水深は50センチ以上にします。ただ、それだけではアオサギが飛び込む可能性があるので、ここに魚がいてもアオサギが簡単に見つけられないように水草を茂らせます。この区間は水際から少なくとも2メートルはとったほうがほうが良いと思います。あまり短いと飛び越えて深いほうへダイブする恐れがありますから。ただ、これは相当な工事になりますし、池をつくる段階でやっておかないと、被害があってからつくり直すのは何かと大変そうです。

次は、アオサギを驚かして追い払う方法です。これはとにかくアオサギをびっくりさせれば良いのですからいろいろな方法が考えられます。単純に犬を放し飼いにして上手くいっているところもあります。音を出す装置とかでもいいわけです。そんな中で今回紹介するのはスプリンクラー。動物が一定範囲内に近づくと水が自動的にまき散らされる仕組みのもので、スケアクロウというでアメリカの製品です。パッケージにオオアオサギが描かれているところを見ると、あちらも日本と同じでサギ類の食害に手を焼いているということなのでしょうね。なお、実際にお求めになりたい方はAmazonで買えば半額くらいになるようです。こちらのビデオで実際に動作している様子が見られます。猫も犬もアライグマもシカも、そしてもちろんオオアオサギも皆びっくりして逃げていきます。ただの水ですから動物や鳥を傷つけることもありません。こんなものでも使いようによってはけっこう効果があると思います。アオサギの食害に困っている方、一度ご検討されてはいかがでしょうか。

同じ目線で気にかける

コロニーが壊滅したという見出しで何事かと思ったら、竜巻にやられたのですね。アメリカのオオアオサギの話です。 ⇒ StarTribune(2011年5月23日付)

記事を読まなくても写真が全てを物語っています。ここにはもとも100前後のつがいが営巣していたんだとか。今はその面影すらありません。枝に点々と見えるのは呆然と立ち尽くすオオアオサギでしょうか。そして、最後の写真。これは衝撃的でした。

なぜこれがショッキングなのか、しばし考えてしまいました。もちろん死体が写っているというのはあります。でも、それだけではないような気がするのです。

アメリカでは今年、例年より多い竜巻が発生し、あちこちで大きな被害が出ているそうです。記事にある竜巻は日曜に発生したもので、人も死んでいます。にもかかわらず、早くも翌日の新聞にこの話が載っているのです。それだけでもかなり異例な扱われ方だと思います。さらに、普通ならコロニーが壊滅したという話だけで終わりのはずなのに、災害でヒナの命が多数奪われたことにはっきり言及し、写真まで載せているわけです。人間の場合なら、災害があれば人的被害が記事になるのは当たり前。けれども、野性の生き物についてこのような取り上げ方をするのはとても珍しいのではないでしょうか。これは一見なんでもないようで、じつは画期的なことかもしれません。野性の動物に対して、人に対するのと同じ目線をもっていなければ書けない記事だと思います。

ついでにもうひとつ。これも数日前に載ったオオアオサギの話です。 ⇒ Akron Beacon Journal(2011年5月20日付)

御覧のとおり、オオアオサギの営巣木が巣をつけたまま倒れかかっています。どうも地盤が緩んだのが原因のようですね。1、2週間かけてだんだん傾いてきたそうです。そして、ただそれだけの記事です。写真を見ると、木が電線にひかかりそうな感じで、普通に考えれば、危険だからその前に木を切り倒すことになったとか、そうでなくても電線のことで対応に苦慮しているとか、その種の記事になりそうなところです。ところが、ここでは電線のデの字も出ないんですね。ただ、木にかけられている15個の巣が心配だ、と。

このふたつの話は全く別の場所で起きたことながら、どちらの記事にも同じ空気が流れているのを感じます。その空気はここ日本にももちろんあります。ただ、それはあくまで個々人のものであって社会全体で共有しているものではないのですね。ここで紹介した記事も、もしかしたら記者固有のものの見方が前面に表れただけかもしれません。けれど、もしこれが、彼らの属する社会が全体で共有する意識であるなら、そこには学ぶべきものがたくさんあるように思います。日本で人と野生動物のかかわり方を考える上でのヒントが数多く隠されているような気がするのです。

〔追記〕竜巻の被害はテレビニュースにもなっていました。 ⇒ KSTP TV(2011年5月24日)
犠牲になったオオアオサギは180羽(ほとんどはヒナ)にもなるそうです。ただ、200以上あった巣が全て無くなったということですから、行方不明のヒナがまだかなりいるのでしょう。映像に写っているのは運良く生き延びることのできたヒナ。まさに九死に一生を得たヒナたちです。

嵐の後

ゴールデンウィークも終わってしまいましたね。この間、ヒナの誕生ラッシュだったコロニーも多かったのではないでしょうか。北海道は連休中、みぞれや雪の舞うあいにくの天気でしたから、生まれたばかりのヒナには最初からずいぶん苛酷な環境だったと思います。寒さや雨もさることながら、サギたちにとって一番気の毒だったのは猛烈な風。ヒナのところも卵のところも関係なくかなりの被害があったようです。

風の翌日に訪れたコロニーでは、巣が1mほどずり落ちているのを目撃しました。しかも落ちかけの巣にはまだ卵が…。親鳥は落ちかけの巣に座るわけにもいかず、巣のすぐ傍らでただ立ち尽くすしかないようでした。別のコロニーでは枝があちこちで折れており、巣が幹ごと風にもっていかれて跡形もなくなったところもありました。

ただ、このように被害の様子があからさまに分かるケースはむしろ少なく、一見変化がないように見えて実は被害を被っている場合は意外と多いのではないかと思います。というのは、それだけの風が吹く中、親鳥が巣に留まっていられるのかという疑問があるからです。もともと大揺れに揺れる木のてっぺんで暮らしている鳥ですから、相当な風でも平気なのは確かです。けれども、折れた枝が飛んできたり周りの木が幹ごと折れるような暴風の中、それでも巣に留まり続けるのかどうか。アオサギの場合、身の危険を顧みず、何が何でも卵やヒナを守るということはあり得ないですから。人間の価値観で考えると無慈悲なように思えますけど、彼らは自分の身に何かあれば、その時点で卵もヒナもアウト。まずは自分の命を確保することが最重要です。そう考えると、これは限界というところで親鳥が巣を離れたとしても不思議ではなく、そうなれば後に残された卵やヒナには風の猛威に抵抗する術はありません。そのような条件で観察したことがないので本当のところは分かりませんが、こんなふうに犠牲になる卵やヒナは少なくないのではないかと思います。

若いカップル

北海道の場合、4月というのは冬から春への過渡期。その過渡期もそろそろ終わろうとしています。札幌の隣の江別コロニーではまだ北向きの斜面に雪が残るものの、木々には緑の新芽が目に付きはじめました。

ひと月ちょっと前は営巣しているところがまだ数十巣だったコロニーも、現在は160を超えるほどの巣の数になりました。これで9割5分くらいは揃ったのではないかと思います。これからは増えても10巣ていどが限度でしょう。

そして江別コロニーでは、今まさにヒナ誕生の季節を迎えています。私が最初にヒナのサインを確認したのは4月27日で、わずかに聞こえるか細い声でそれと分かりました。まだまだ小さくかすかな声ですから、よほど聞き耳を立てていないと気付かないくらいです。おそらく、生まれて3日と経っていないでしょう。ヒナはまだ小さすぎて姿は見えませんが、ようく見ていると、親が巣の中に首を突っ込んで餌を吐き戻していたり、ヒナの食べ残しを再び飲み込んでいるのを目にすることができます。これから連休にかけて、そうした巣がどんどん増えてくるでしょうね。

この時期に面白いのは、若いカップルが新たに営巣を始めることです。右の写真にもひと組み、とんでもなく若いペアが写っています。左の2羽がそうで、上で翼を半ば開いているのが雄、その下で前屈みになっているのが雌です。雄はすっきりきれいな成鳥ですが、雌のほうは完全な1年目幼鳥です。白黒のはっきりした色は出ておらず、体全体がまだほとんど灰色です。

一般にアオサギの繁殖は2年目からと言われています。けれども、まれにこんなふうに1年目から繁殖を試みることがあるんですね。2年目でも滅多に見ることは無いので、1年目というのはかなり珍しいと思います。たぶん、アオサギで1年目幼鳥の繁殖例はまだ報告されていないはずです。興味のある方はきちんと観察すれば論文に発表できると思いますよ。ちなみに、江別コロニーでは昨年も1年目幼鳥の営巣が確認されています。残念ながら、その巣はかなり見にくい所にあったため、葉が茂ってからはどうなったか追跡できませんでした。今回はとても見やすいところで営巣しているので幼鳥の雌がいればすぐ分かると思います。ただ、問題なのは若いつがいは子育てを上手くやれるとは限らないこと。私がこれまで見てきた範囲で上手く営巣を続けた若いペアはひと組もありません。遅かれ早かれどこかで失敗してしまいます。一番長く営巣を続けたところでも、ヒナが孵化したと思われる頃までしかもちませんでした。生殖能力はあっても子育てするにはまだまだ未熟ということなのでしょうね。写真のペア、今のところは交尾もし、巣もそれなりのものが作られているようです。さて、この先、どこまでがんばれるでしょうか。

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