アオサギを議論するページ

雪の上で大丈夫?

北海道の冬も先の週末でとうとう力尽きてしまったようです。いよいよ春ですね。
こちらのアオサギはいま一番慌ただしい時を過ごしています。求愛ディスプレイに交尾に巣づくりにとやらなければならないことがたくさんあります。卵を抱いているところも少しずつ多くなってきたようですね。

写真はすでにつがいになり営巣を始めているペア。見たところ、この巣は冬の間に壊れることなく、無事、春まで残ったようです。ただ、巣がきれいに原形を留めているということは巣の上に雪がしっかり積もるということ。この巣の表面には今なおかなり白いものが見られます。それでも、このペアはやるべきことはちゃんとやっているようで、巣材もせっせせっせと運んできて巣づくりに余念がありません。さすがに雪の上から枝を差し込むのは無理なようでしたが、巣の縁を修繕したり雪の上に巣材を置いたりと、できる範囲で着実に仕事をこなしている様子でした。

ところで、この巣を見て驚いたのは、こんなに雪が残っているのにすでに卵があったこと。左のアオサギの足下にきれいな青緑色に見えるのがそうです。この卵、雪の上に置かれています。冷えきってしまわないのか心配ですけど、考えてみれば夜間はまだ零下になるわけですから、すけすけの巣より雪が敷かれているほうが却って暖かかもしれません。ときどき転卵していますし中身が凍ってしまうことはないのでしょう。そして親鳥も雪の上にぺったんと座り込んで抱卵しています。あれだけふかふかの羽毛があれば、雪に触れていても冷たくないのでしょうね。

こんなアオサギ見たことない!

《注意》この記事はエイプリルフール用に書いたもので、内容は一から十まで全くの出鱈目です。騙されて読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

ずいぶん暖かくなりましたね。3月最後の1週間は一年でもっとも劇的に季節が変わるような気がします。そして、今日からはもう4月。すでに抱卵に入っているアオサギも多いのではないでしょうか。

さて、しばらく前からお知らせ欄に掲載していた「こんなアオサギ見たことない!」のコーナー。これが予想外に反響が大きく、全国各地から多くのアオサギの写真を送っていただきました。あらためて御礼申し上げます。写真がかなりの量(32枚)になりましたので、3月いっぱいでこのコーナーはひとまず終了することにします。皆さんの写真はきちんと整理した上で近日中に専用のページでご紹介するつもりです。お楽しみに。

ところで、今回は海外からも写真を提供してくださった方が何人もいらっしゃいました。たぶん当サイトを翻訳機能で自国語に直したのでしょうね。そこまでしてわざわざ読んでくれるとはありがたいことです。せっかくなので、そのうちのおふたりの写真をここで紹介したいと思います。いずれもかなり珍しく貴重な写真です。

まずはアイスランドから。アンナ・グズムンズドッティルさんの撮ったアオサギです。これは顔そのものが変なわけではありません。どのアオサギでもこのアングルで向き合えばだいたいこんな顔になるのです。変わっているのは瞳の色。本来、真っ黒なはずの瞳が、このアオサギでは青みがかった灰色になっています。じつはこれ、30年ほど前から知られていることで、アイスランドのある地域では普通のことなのです。

アンナさんによると、これを撮影したのはアイスランド西部、ヴォトロックル間欠泉の近くということです。青い目のアオサギたちの唯一の生息地として知られているところで、全世界でこの一角にのみ200羽ほどが確認されています。ただ、目の色は変わっても種が違うわけではないのですね。そればかりか亜種のレベルでも違わないのです。地理的に隔離されているわけでもなく、彼らは繁殖期には他の黒い目のアオサギと一緒に繁殖活動を行います。つまり、目の色以外は全て同じ。ただ、もうひとつ決定的に違うことがあります。

普通、アイスランドで繁殖したアオサギは秋になるとイギリス方面に渡ります。ところが、この小さな個体群は他のアオサギが去った後も冬じゅうアイスランドに留まるのです。アイスランドといえばその一部が北極圏にかかるほど北方にある国ですが、どうも間欠泉の周囲一帯は地熱で温められており越冬することが可能なようなのです。それにしても、目の色の違いで渡るか留まるかがはっきり分かれるというのもおかしな話です。普通に考えれば、目の色と渡りの行動との間には関連があるとも思えず、青い目のサギが渡ったり黒い目のサギが越冬したりしても良いはず。しかし現実はそうはなりません。

じつはこれについては遺伝学の分野でかなり研究が進んでいて、現在ではそのメカニズムがほぼ解明されています。詳しい内容については分かりかねますが、大雑把に言うと、目の色を決定する遺伝子と、渡りの衝動を促すホルモンをつくる遺伝子が染色体の極めて近い位置にあるため、染色体の交叉時にこれらの遺伝子が離れ離れになることがほとんどないということのようです。つまり、青い目と越冬するという表現型は常にワンセットということですね。

なお、青い目の形質は劣性遺伝のため、つがいが両方とも青い目でなければ青い目の子供は生まれません。越冬のほうも同じく劣性遺伝で、越冬個体どうしのペアでなければ越冬個体は生まれません。ただ、染色体の交叉時に両遺伝子が分離することが全く無いわけではなく、ごくまれに青い目のアオサギが渡りの群れに混じることもあるようです。ところが、イギリスで青い目のアオサギを目撃したという報告は未だかつて無いのです。おそらく南方の強い陽射しのもとでは色素の薄い瞳は致命的なのでしょう。

次はスイスから送っていただいた写真。ディディエ・ブランシャールさんのアオサギです。何と言えばいいのか、こんなアオサギは初めて見ました。頭の黒いラインがなくなるだけでこんなにイメージが変わるものなのですね。ディディエさんもここまで真っ白な頭のアオサギは初めてだったそうで、地元の新聞に写真が載った際にはかなり話題になったといいます。これだけインパクトがあれば、地元と言わず全国紙でも注目を集めそうですね。

ところでこのアオサギ、突然変異ではありません。もともとはありふれた風貌のアオサギだったはずなのです。つまり、いつの頃からかだんだん白くなったというのが真相。つまり、人間で言えば白髪になるようなものですね。ただ、そうとう長生きしなければこうはならないので、十数年生きれば長寿という野生のアオサギではまずお目にかかることはありません。

この白髪(形態学的には頭部白化と言うそうです)については滅多にあることでないのでほとんど研究されていませんが、唯一、ロンドン動物園で飼育下のアオサギを対象にした報告があります。そのアオサギは1965年、翼を負傷したところを保護されデイブと名づけられた雄の幼鳥で、以来、22年間、一度も動物園から出ることなくその長寿を全うしています。そして素晴らしいのは、デイブのほぼ全生涯にわたる形態上の変化が克明に記録されたこと。こういうところはイギリスらしいというか流石です。

その報告によると、デイブの頭部はおおよそ16、7歳の頃から次第に灰色っぽくなり、20歳前後でほぼ真っ白になったということです。ということは、写真のアオサギも少なくとも20年は自然界で生きているということになりますね。そう思って見ると、なんだか仙人のようにも見えてきます。それに、この歳になってもまだ鮮やかな婚姻色を呈しているところなど、野生の逞しさを感じるというか、まったく天晴れというほかありません。

ところで、ヴィヴィエさんによれば、このアオサギのいたレマン湖近くのシャテル・サン・ヴィーゴという村では、白頭のアオサギをテト・ブランシュ(フランス語で白い頭、そのままですね)と呼んで崇拝する風習が今も残っているということです。なんでも、白頭のアオサギを見た人は長寿を授かるのだとか。スイスに行かれる方はぜひ探してみて下さいね。

このおふた方の写真は今回とくに珍しかったので、一緒に添付されていた他の写真と合わせてギャラリー風のページを特別につくってみました。ここまで読んでもまだ寛容であられる方は是非ご覧いただければと思います。
アンナさんとヴィヴィエさんの写真のページ

サギの救助

アオサギといえば警戒心の強さは折り紙付き。捕まえようにもそう簡単に捕まる鳥ではありません。この警戒心も生きる上ではなくてはならないものですが、場合によってはその警戒心の強さがかえって仇となります。たとえば、トラブルに見舞われたアオサギを人が善意で助けようとしたとき。

そんな事例は探せばいくらでも見つかります。たとえば…。

といった具合で、何とかしてあげたいけれどどうにもならないということが多いようです。

そんな場合、少しは役立つかもという方法がこちらのビデオで紹介されていました。場所はフロリダ州のとある公園のようです。なお、このビデオはNorthwest Florida Daily Newsで紹介されています。

ビデオのサギはくちばしに釣り糸が絡まったオオアオサギの幼鳥。映像が始まった途端、捕獲は一瞬で完了し、その後、はさみやナイフで釣り糸を切る作業がしばらく続きます。最後は放鳥。アオサギは無事に飛び立ってゆきました。

この映像、よく見ると生きた魚でアオサギをおびき寄せているんですね。まあ、そうでもしないとあんな都合の良い場所にはとても来てくれないでしょうけど。記事を読むと、捕獲の3週間前に、公園の常連であったデビーさんが糸の絡まったオオアオサギを見つけたのが始まりだったようです。デビーさんも当初は為す術がなかったようですが、やがて小さな魚を与えはじめます。サギのほうは魚を突っつくことでわずかな滋養を得ることはできていたようです。たぶん、くちばしの開閉が多少はできたのだと思います。ということで、あらかじめ餌付けされた状態ではあったようです。サギにしてみればせっぱ詰まった状況で、持ち前の警戒心もいくぶん犠牲にせざるを得なかったのでしょう。網が投げられた後のオオアオサギの反応もそれほど悪いようには見えないのですが、さすがにあれだけ近いとどうしようもありませんね。あえなく捕まってしまいました。

この捕獲に使われたネットはたぶん投網だと思います。このていどのものだとサギを傷つけることも少ないかもしれません。サギにある程度まで近づける状況であれば、この方法は機動性もありもっとも簡便で効果的な方法のように思います。おそらく、役所かそれなりの機関であればロケットネットとかネットガンとか他にも方法はあるのでしょう。けれども、そちらのほうがより安全で確実な方法かというと疑問です。

デビーさんも最初は保護してくれる公的な機関に連絡したそうです。ところが一向に音沙汰無し。仕方なく、知人のつてを辿っていくうちにこの投網をもったジミーさんを見つけたそうです。この場合、捕獲の技術をもったジミーさんに出会ったことは幸いでしたが、サギを救助できたのはあらかじめデビーさんが餌付けしていたからこそ。そういうことまで役所が面倒を見てくれるかと言えばこれまたはなはだ疑問です。

法律上は日本でもアオサギを勝手に捕獲することは禁じられています。けれども、ここで最初に挙げた国内のいくつかの事例を見ても、合法的に捕獲できる人たちが半ば匙を投げているのは明らかです。実際、1羽のアオサギを人数と時間をかけて何が何でも助けようとすることはないでしょう。けれども、これがたとえばタンチョウだったらどうでしょうか? なんだかんだ言っても、結局のところアオサギとタンチョウでは人から見た命の重さが違うのです。善意の行為が法律によって抑えられて、助かるかもしれないアオサギが無駄に命を落とすのはやりきれません。もし、デビーさんとジミーさんのように時間をかけて救助できる人がいるなら、それに伴う行為は法的にも認められて然るべきものだと思います。そうすれば、僅かかもしれないけれども助かる命は確実に増えると思うのです。

地震

地震が起きて5日が過ぎました。どれだけテレビで映像を見ても、この惨状が何なのか、私の想像力ではとても理解できそうもありません。

アオサギが、ここ北海道にも渡ってきました。札幌の隣にある江別コロニーでは、昨日の段階で60羽弱がすでに営巣を開始中。12日に確認したときはまだ到着してませんでしたから13日あたりに飛来したのでしょう。とはいえ、今こちらに来ているのは全体の2割にも満たないはずで、ほとんどはまだ北海道にも辿り着いていないものと思います。もしかすると、今頃、被災地付近を北上中の群れもいるかもしれません。あるいは、11日に地震や津波に遭遇したサギがいたかもしれません。ただ、翼をもつ彼らはそこにたまたま居合わせることはあっても被災することはないんですね。それを思うと、人が地上にしがみついてしか生きられないことの無力さをあらためて感じざるを得ません。

アオサギは人間と比べるととても不確実な世界に生きています。激変するのが当たり前の環境に身を置く彼らにとって、地表面が変化するとか部分的に無くなるとかはもとより織り込み済み。翼があることに加えて、そうしたことが起きても実害が極力少なくなるようなライフスタイルを彼らは選んでいます。ところが、人はというと、しっかりした地面のあるところでしか生きられません。だからこそ、少しでも安心して暮らしていけるように、身の回りのあらゆるところを細部に至るまで手を加えてきたのだと思います。しばしば個人や組織の欲や独善、あるいは無知によってその行為の正当性が歪められはしても、人が環境を自ら改良するのは、基本的にはそうすることでしか生きる術がないからです。けれども、人がどんなに努力をしても、地球がほんのちょっと身を震わせただけで一瞬で全てが無くなってしまうのが現実。その不条理さを思うといたたまれません。

亡くなった方のご冥福を心よりお祈りします。そして、今どこかで無事でいるはずの方々が一刻も早く救出され、避難所の皆さんが少しでも早く日常の暮らしに戻れることを切に願っています。

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